韓国では18~28歳の健康な男性は約20カ月間の兵役につく義務がある。しかし、スポーツや芸術で功績を残した人たちに対しては、兵役の免除や延期が認められることもあった。

 それだけに、大人気音楽グループ「BTS(防弾少年団)」メンバーらの兵役がどうなるのか、その動向は世界中のファンから注目されている。12月1日の韓国国会でBTSメンバーの兵役を30歳まで延期できるとする法案が可決したが、それから先のことはいまだ不透明と言わざるを得ない現状だ。はたして今後、事態はどのように進むのだろうか。

 ここではノンフィクション作家の藤脇邦夫氏の著書『人生を変えた韓国ドラマ 2016~2021』(光文社新書)の一部を抜粋。同氏が分析する、K-POPスターのドラマ出演の実情、そして、BTSメンバーのこれからの動向予測を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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新しい俳優養成の場

 専業俳優とは違う、K‐POPシンガーの俳優進出に筆者が気付いたのは、「神様がくれた14日間」(2014年 SBS)に知的障害者の一人として出演したバロ(編集部注:男性アイドルグループ「B1A4」のメンバー)が最初だった。当初は、劇団出身の若手俳優の一人と思い込んでいたぐらいで、とても歌手の余技とは思えなかった。一俳優としてもその存在感は圧倒的で、7年前のドラマの登場人物を未だに記憶しているのだから、よほど印象的だったのだろう。

 こうした例は、別にバロに限ったわけではない。他にも、相当数の好例があり、こうした専業俳優以外の歌手のドラマ出演が韓国ドラマのクオリティを一段と上げたことは間違いない。少なくとも、現在までドラマ全体のマイナス要素になっていないのは驚くべきことである(日本では絶対にそうならない)。

 女優で最初に気付いたのは、女性グループ「Apink」メンバー出身のチョン・ウンジで、「応答せよ1997」(2012年 tvN)がドラマデビューだが、「トロットの恋人」(2014年 KBS)でもその存在感は圧倒的だった。

 筆者は最初オーディションで採用された新人女優だと思っていた。「トロットの恋人」は歌手志望という設定のため、歌がうまいのは当然にしても、演技も自然で、いわゆる女優と全く引けを取らないのは意外だった。

 他にも「私の人生の春の日」(2014年 MBC)のスヨン(編集部注:女性アイドルグループ「少女時代」のメンバー)等の好演もあった。

 2010年代に入ると、K‐POP出身者の俳優としての出演は、ドラマに不可欠な要素となる。