火葬炉からは、美味しそうな匂いが漂っていた
——『梅宮家の秘伝レシピ』では、辰夫さんが「晩年も、病で痩せた体でもキッチンに一日中立っている」とありました。最後に作られた料理などは覚えてらっしゃいますか?
アンナ 最後、なんだろう。最後の最後まで好きなもの作ってたかも。でも、体にいいものを、とか考えずに作っていたと思う(笑)。昔から、そうだったから。透析をする何年も前からいろいろと薬を飲んでたし、お医者さんに「梅宮さん、塩分の摂り過ぎですよ」って食事制限するようにも言われてたけど、守らないんですよね。
私が知る限り、塩分は1日6gまでって言われた。そうしたら「おまえ、6gなんてどんなもんか知ってるか」と真顔で言われて(笑)。
——料理されてるから、どれくらいの量かわかってしまう。
アンナ 「俺は1日6gじゃなくて、1回で6g以上だ」「病院や医者が言う“体にいい”ってのは、誰にでも当てはまるもんじゃないんだ」みたいなね。とにかく「好きなものを食べて、俺は死にたい」って言い続けてた。透析を始めて10か月で命が終わってしまったけれども、そうなる直前までは食欲もあったし。
最後の最後まで時間さえあればキッチンに立ってたけど、お酒が好きだったので酒のつまみみたいなのをよく作っていましたね。
——辰夫さんのお棺には、ステーキ肉、アジシオ、味の素、築地の丸山海苔、だし昆布、ハイチュウのりんご味20個、男梅、プッチンプリンなど、好物やお気に入りの調味料を入れたそうですね。選ぶのも大変だったのではないかと。
アンナ みんなが父の好物を知ってたから、持ってきていただいたものもいっぱいありましたね。普通はお棺には花だけど、「パパの場合は、なんだかお花じゃないよね」って。ただ悲しむんじゃなくて、「パパ、頑張ったね」っていう“お疲れ様会”みたいな感じの葬儀にしたかったし、できたんじゃないかな。
——火葬炉に入れたら美味しそうな匂いが漂ってきたとも。
アンナ いろいろお棺に入れながら想像してたら、どう考えても美味しい匂いになるなと思ったの(笑)。焼いちゃうわけで、言ってしまえばバーベキューだしね。父からしたら、これも料理みたいなものかなって。ユーモアをもって「さよなら」をしたかったんですよね。
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撮影=三宅史郎/文藝春秋
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