梅宮辰夫氏が遺した料理帖をもとにした料理本『梅宮家の秘伝レシピ』。 その監修を務めたのは、娘である梅宮アンナ氏(49)だ。
「父のレシピを引き継ごう」と決心して未経験に近かった料理を始めたという彼女に、辰夫氏にとって「心臓みたいなものだった」真鶴の家での生活、料理の楽しさに目覚めてから抱いた目標などについて、話を聞いた。(#1〜#3の#3/#1から読む)
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「俺からこの家を奪ったら、俺は生きてる意味がない」
——2019年刊行の『不良役者 梅宮辰夫が語る伝説の銀幕俳優破天荒譚』(双葉社)で、辰夫さんは役者になった目的のひとつに“きれいな海が見える一等地に家を構えること”を挙げています。この真鶴の家にお邪魔して、まさにそれを実現されたお宅だなと思いました。
梅宮アンナ氏(以下、アンナ) 父にとっては心臓みたいなものだったんでしょうね。真鶴と松濤の家のどちらかを手放そうと母と話すたびに、「俺からこの家を奪ったら、俺は生きてる意味がない」と言っていたんですよ。
父が若くて、働けて、お金がいっぱい入ってくるならいいけど、どんどん稼ぎは細くなっていたから。2軒の家を維持するのって、とても大変なことなので。
松濤の家は200平米ぐらいのマンションだったけど、私が小学生の頃に建った古いマンションでオール電化とかじゃないから、電気代だけで月20万円ぐらいするの。私は「早く売って、もっと安く暮らせる家に移りなよ」と言ってたけど「冗談じゃない。俺はどちらも売らない」と言い張って。それで、可哀想なことに、母のお小遣いが減らされていくの(笑)。
——お小遣いを減らして、家の維持費に充てたと。
アンナ ママも死活問題だから、「もう売って!」みたいな感じで。10年ぐらい、そんなことをやってたんですけどね。さすがに父も「うちの女性たちの言ってることもわかる」と思ったのか、2018年に松濤の家を売却して。うちの場合はラッキーで、売り出して1週間でリノベーションをやってる会社が買ってくれたんです。
ーーアンナさんは、真鶴の家は気に入られていたのですか?
アンナ すっごい嫌いだったんです。行くと父が怒るから。「帰れ。俺んちだ」って言い出すから、こっちも「なにさ!」と言い返して、ドアをバーンと閉めて帰ることがしょっちゅうあったんですよ。
あと、行っても“イッツ・ア・梅宮辰夫ワールド”なので、なんか面白くなかったの。すべてが梅宮辰夫さんの時間軸で流れてたから。
いいなと思えたのは、父が亡くなって母と住んでからですね。