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 最初は「Uber Eatsないじゃん。無理無理無理」ってなってました。ピザ屋さんが1軒あるくらいで。やっぱり、東京で生まれて育ってたから、そうなっちゃうんですよ。

 でも、コロナ禍になって家にいるようになったら、朝に太陽が昇ってきたり、その風景だったりが、私の時間軸で感じられてきて「あぁ、いいところだなぁ」って。 

売ろうと思ったけど、自分のなかで値段が付けられない

——松濤に続いて、真鶴の家も売ろうという考えは。 

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アンナ 父が亡くなったら、すぐに売ろうと思って動いてもいました。だけど、自分のなかで値段が付けられなくて。私、家を見るのが好きで都内で売りに出ている家を見て回ってたんですよ。そうすると、「え、これで1億円するの」みたいな物件が多いんですよ。

 人それぞれの価値観になっちゃうけど、たとえば窓をガラッと開けて隣のマンションで干されている洗濯物が見えても、駅の近くがいいみたいな人もいれば、駅から少し遠くても窓を開けたら空が広がってるほうがいい人もいる。私は後者で。 

 

 ここは、覗かれることもないし、こっちも見なくて済むんですよね。それとやっぱり、この景色ですね。そりゃあ駅から遠いし、車がないと何もできないし、急な坂道を登り切った山の上に建ってるので大変だけど。実際、土地評価は低いし、売ってもいい値段にならないし。でも、ここからの景色は値段が付けられない。 

 じゃあ、東京を離れてみようかなと。初めての試みだったけど、本籍も移して、車のナンバーも湘南にしました。そうしないと気持ちがフワフワしちゃうからって。 

——窓一面が海ですものね。ちょっと下を覗くと港があって。 

アンナ 真鶴港。夜は真っ暗で何も見えなくなっちゃうんだけど、朝がくると「ここって、素晴らしいなぁ」と毎日思います。最初のうちは、すぐに飽きるかなと思ってたんですけどね。自然の中なので、朝は猿が来ることもあるし、ハクビシンも出てきますよ。 

 

「真鶴に引っ越そう」と本気で思ったきっかけ

——辰夫さんの時間軸ではなく自分の時間軸で感じられるようになったとおっしゃいましたが、それが明確に切り替わった瞬間や出来事ってありましたか? 

アンナ 引っ越そうと本気で思っちゃったのは、木が腐ったから。