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頭から離れない、父の一言

——「俺、こんな体でいつまで生きるんだろう」と仰ったわけですから、辰夫さんも透析を続けられて深く思うところがあったのでしょうね。 

アンナ 透析をやるようになってから、選挙に行ったんですよ。「投票したいから、運転してくれる?」って言われたから投票所に連れて行ってあげて。

「誰に入れたの?」って聞いたら、「俺は安楽死を望んでいる。いまの日本では安楽死はダメだけど、認めさせようとしている政治家がいるから、その人に入れた」って。それを聞いて、生きること、死ぬことの意味合いをすっごく考えさせられたんですよ。もちろん、父もそれは考えていただろうし。 

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 延命といっても、これ以上する必要ってどこにあるのかなって。父本人が誰よりも辛くて。「希望も夢も、なんかワクワクすることもなくなると、やっぱり人間って生きてる意味がないんだよ」と、ずっと言ってましたね。 

——『ボクらの時代』では、アンナさんは闘病中の辰夫さんについて「もっと優しかったはずなのに」とも仰っていました。辛い闘病が原因で、荒んでしまう日もあったのですか? 

アンナ 病気が人を変えてしまうんですよ。これは父に限らず、同年代で親御さんが病気をされていたり、高齢だったりするお友達に話すと「いや、うちもそう」「うちだって、いつも怒鳴ってるもん」とか言いますね。

 

 人間って、余裕があった時には笑っていられたことが、余裕がなくなるとなんだか頭にきちゃう。高齢者ってわけじゃなくて、若い人でも年齢に関係なく起こると思うけど。 

 父は神様みたいな人だったんですよ。絶対に怒らないし、根っからの自由人でやることなすこと大胆で。だけど、A型だったせいか生真面目で。「ダメ」なんて言わなかった父が、「ダメ」を通り越して怒鳴るみたいなね。ちょっと、物を動かしたら「触るな!」とか。