※本記事は、芸能ジャーナリストの二田一比古氏による「文藝春秋」2010年10月号の特集「真相未解決事件35」への寄稿を転載したものです。(肩書・年齢等は記事掲載時のまま)

様々な疑惑を呼んだ飯島愛さんの死

 2008年12月24日、クリスマスイブの日に、飯島愛さん(享年36)は東京・渋谷にあるマンション21階の自室で遺体となって発見された。

飯島愛さん ©文藝春秋

 リビングの椅子から転げ落ちるように、うつ伏せになって倒れていたという。発見者は「連絡が取れなくなったので様子を見にきた」という知人女性。遺体の腐乱状況から死亡推定日は1週間前と判明した。

 飯島さんの突然の死は、様々な疑惑を呼んだ。「自殺」「事故死」「薬物中毒死」さらには「他殺」説まで飛び交った。なかでも「薬物」説は、警察が初動の段階で薬物検査キットを持ち込んだことから有力視されていた。伏線はあった。その年の1月頃、飯島さんは渋谷署にふらっと現れ、「私、クスリを飲んでおかしくなっちゃった」などと意味不明なことを話し始めたという。渋谷は都内有数のクスリの流通地。慌てた警察官はすぐに薬物検査を行ったが、結果はシロだった。最終的に死因が特定されたのは翌年2月。事件性はなく、「肺炎」だった。

ADVERTISEMENT

死の前年、3月に芸能界引退

 飯島さんの死の謎を解くカギは、07年3月の芸能界引退に遡る。当時、テレビのレギュラー番組4本を抱える売れっ子だった飯島さんの引退理由は「腎盂炎の悪化」というものだった。「病気なら“休養”という形で様子を見るのが普通で、ましてや人気タレント。事務所も引き止めたはずですが、それ以上に芸能界を辞めたいという本人の意思が固かった」というのが芸能関係者の共通した見方だった。

写真はイメージ ©iStock.com

 飯島さんは多くの芸能人と違い、自ら志望して芸能界入りしたのではない。大ベストセラーとなった彼女の自伝「プラトニック・セックス」に記しているように、波乱万丈な思春期を送っている。家出、ホステス、愛人、整形などを経て、最終的に辿り着いたのが「まとまったお金が欲しかった」という理由で入ったアダルトビデオ(AV)の世界だった。

 そのAV出演が芸能界入りのきっかけとなった。愛くるしい顔とセクシーな姿態にテレビ界が注目。深夜のお色気番組「ギルガメッシュないと」(テレビ東京)のレギュラーとなり、大胆なTバック姿を披露。「愛ちゃん」人気はたちまち社会現象になった。