自然のままの人々を撮影するのが好き
――見ていてとにかく型破りな作品だなと思いました。監督自身は、これまでたくさんの映画の題材になってきたジャンヌ・ダルクの物語を手がけるにあたり、過去の作品とはまったく異なる新しいことをやるぞ、という意図があったのでしょうか。
デュモン そのとおりです。ジャンヌ・ダルクの物語はフランスで普遍的かつ伝統的なテーマです。私はその伝統に一石を投じようと思ったのです。
まず思いついたのは、これまでよりずっと若いジャネット(ジャンヌの幼少期の呼び名)にすること。過去の映画では実際とはかけ離れた年齢の役者が演じ、イングリッド・バーグマンがジャンヌ役を演じたのは30~40代の頃。私が起用したのは10歳前後の俳優ですが、これはより史実に近いと言えるでしょうね。
実際、ペギーの戯曲のなかでも、彼女が最初のお告げを得る年齢は8歳か9歳頃と書かれています。一方で、年齢はそれほど関係ないとも考えています。ジャンヌ・ダルクという人物は年齢を超越した神話的存在ですから。
――ジャネット/ジャンヌ役を演じたリーザ・ルプラ・プリュドムは、これが演技は初めての経験なのですよね?
デュモン ええ、まったく経験がありませんでした。最初はどこにでもいる平凡な少女が最後には聖なる女性に変化していく、その変化を描くには、演技経験がなく成熟していない、ある意味で全く女優らしくない彼女がぴったりでした。
――監督は、『ユマニテ』(1999)や『フランドル』(2006)、そしてテレビシリーズである『プティ・カンカン』(2014)『プティ・カンカン2』(2019)でもしばしば演技経験のない方々を起用されていますが、それはどういう理由からでしょうか。
デュモン 私は風景と同じように自然のままの人々を撮影したいのです。まだ役者になりきっていない、脆弱で不完全な人々に演じてもらうことでそこから真実のようなものが生まれてくる、その過程を捉えるのが好きなんです。