「初めて話を聞いたとき『この人、本当に何にも知らないで女子商へ来たんだな』と思いました」。国公立大学への進学が決まった生徒の一人が、後輩向けの進学体験発表会でそう話してくれた。
私は昨年度(2020年度)、神戸星城高校から私立福岡女子商業高校に赴任し、常勤講師という立場で進学指導に携わった。加速する商業高校離れに加えて共学化に踏み切る学校が増加している中、本校は存続をかけてもがき苦しんでいた。前校長の「就職も進学も選択できる学校にしたい」という熱意に動かされ、新天地で新たなチャレンジをすることとなった。「女子×商業」は今最も社会から期待されるべき高校なのではないかという想いもあった。次年度に自分が校長になるとは想いもしなかったが。
親への経済的配慮
昨年度は新型コロナウイルスの影響で5月まで休校だったため、これでは間に合わないと思い、まずはZoomを用いてオンラインで進路面談を始めた。
多くの生徒に真っ先に感じたのは、口にはしないが、保護者への経済的な気遣いだった。そこで「修学支援新制度の対象であれば、実質負担はなく進学できる。国公立大学ならその心配もより少なくできる」という話をすると「そうなんですね!」とパッと表情が明るくなった。しかしその後のメールで「親に話したら『あんたが国公立大学にいけるわけなか』と怒られました。国公立大学って難しいんですか?」と質問がくる。「簡単ではないけれど、必死にやれば越えられる壁だよ! 本気で行きたいと思ったならいったん親への相談はやめて、とにかく勉強を始めてみようか」と提案。こういうケースでは、親が了承した後ではなく、まず勉強を始めてみるのがポイントだ。