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2022年の論点

「日本に軍事的警戒を緩めてはいけない」「価値を共有する隣人として…」“正反対の男たち”による韓国大統領選挙の行方

「日本に軍事的警戒を緩めてはいけない」「価値を共有する隣人として…」“正反対の男たち”による韓国大統領選挙の行方

2021/12/27

source : ノンフィクション出版

genre : ニュース, 国際, 政治

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 2022年3月9日、韓国で大統領選挙が行われる。本格的な選挙レースはこれからだが、二大政党制を維持している韓国では、すでに両政党の最終候補の輪郭が明らかになっている。

文在寅大統領の「次」は、もう目の前に迫っている ©AFLO

与党と野党、対照的な2人の有力候補

 まず、すでに候補選挙が終わった与党の「共に民主党」は李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事が、李洛淵(イ・ナクヨン)元首相を抜いて最終候補に選ばれた。最大野党の「国民の力」は、11月になって最終候補が確定されるが、文在寅政権に対して強い反感を示している保守有権者が、「反文在寅の象徴」となってしまった尹錫悦(ユン・ソクヨル)前検察総長に結集するものとみえる。

 進歩陣営「共に民主党」の李在明候補は、1964年、慶尚北道安東で貧農の家の5男4女のうち、7番目に生まれた。貧しいため、小学校卒業後、進学をあきらめて工場を転々としながら家計を助けた。少年工時代には辛い工場生活からくるうつ病のため、何度も自殺を図ったが、現実から逃れたいという一心で独学で勉強に没頭、検定試験を経て中央大学法学部に入学した。

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 全額奨学金をもらって大学生活を始めた彼は、1986年司法試験に合格する。司法研修院時代に当時弁護士だった盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の講義に感銘を受け、人権弁護士の道を選択したという。

 その後、京畿道城南市を基盤に市民運動と人権弁護士活動を続けてきたが、2010年に城南市長に当選し、政治家としての人生が始まった。二期連続で城南市長を務めた後、2018年には京畿道知事に当選し、一気に進歩陣営の大統領選候補として浮上する。

「李在明はやります!」というスローガンを掲げる李氏の最大の長所は、強い推進力と自治体長経験を通じて証明された卓越した行政力だ。

「韓国は福祉後進国」が持論の李氏は、城南市長時代からトレードマークとなった「基本シリーズ」が大統領選の代表公約だ。全国民を対象に、「基本所得」「基本住宅」「基本融資」などを支援するという福祉政策である。「親労働・反企業」の情緒が強く、財源なき福祉万能主義的な経済政策として「希代のポピュリスト」という非難を受けたりもする。