「日本に対しても軍事的な警戒を緩めてはいけない」
外交分野においては、李在明候補が「実利的均衡外交・安保」を主張する反面、尹錫悦候補は、「強力な米韓同盟への復帰」を主張している。
李在明候補は朝鮮半島問題を南北が主導的に解決するという「韓半島運転者論」や、北朝鮮核問題に対する段階的非核化やスモールディールを主張し、政権初期に米朝首脳会談を取り持つとした。
国際関係では、G2の覇権対決の中で「米中に韓国との協力を選択させる」というバランス外交論を主張。対日関係では文在寅大統領よりも強硬で「日本に対しても軍事的な警戒を緩めてはいけない」と、特に慰安婦問題の日韓合意や日韓GSOMIAに批判的だ。日韓懸案については、歴史問題と経済問題をツートラックでアプローチする原則の下、首脳会談を通じて突破口を見出すという立場だ。
「価値を共有する隣人として新たな共栄のビジョンを…」
尹錫悦候補は「韓国の外交安保は韓米同盟から出発する」という立場を堅持。北核抑止のためにICBMなどの米国の戦略兵器を非常時に朝鮮半島で展開することを主張し、文在寅政権が加入を拒否した「クアッド」についても段階的な加入の意思を明らかにした。
対日外交については、「金大中―小渕宣言2・0時代」というキーワードを掲げ、実用主義に立脚した関係改善の意志を表明した。「歴史問題に関しては毅然とした立場を堅持しながらも、韓日首脳会談を通じて自由民主主義や市場経済の価値を共有する隣人として新たな共栄のビジョンを提示する」という計画を明らかにした。
4カ月後に迫った韓国の次期大統領選挙に向けて、このように出身から履歴、そして政治哲学や外交路線など、すべての面で対照的な両候補が激突している。誰が大統領に選ばれるかによって、韓国の運命は大きく変わるものとみられる。
◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2022年の論点100』に掲載されています。