夏休みに入ると、週3日「講座」を開き、その後、添削。夏休み後は、週4日小論文の問題を解き、その後、「解説」という形に切り替える。「講座」の目的は「こんな難しい問題でも解くことができる!」という実感をもたせるためで、「解説」の目的は、自分自身でさらに考える力を養うためである。
「生きる力」を養う科目
また、小論文を解くだけではなく、生徒1人ひとりが「小論文ノート」を作成し、試験までに80近くのテーマをまとめ上げた、7センチ程度のオリジナルノートが完成する。つくり方は最初に説明するが、どのテーマを選ぶかは生徒の自由だ。進路を決定する三者面談の前に、家庭で学習過程を見た保護者は「この子がこんなに自分から勉強をするなんて。結果に拘わらず挑戦させてあげたいと思いました」と納得して応援してくれる。
ある程度の力が身につけば、あとは「自走」できる。こうして休み時間に「社会を良くする方法」について議論し合う高校生たちが生まれる。試験当日、開始5分間は手が震えて書けなかったという生徒もいる。合格発表で喜びのあまり膝から崩れ落ちる生徒もいる。第2志望へ行くことになった生徒も、過去の自分とは異なった自分を実感している。大学に合格するためだけの学びではないのだ。
進路を決めるのは、保護者でも、教師でもない。生徒による自己決定が最も大事だ。「自ら機会を作り、その機会によって自らを成長させよ」。「小論文」は、そうした「生きる力」を養うためにまたとない科目だと実感している。
◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2022年の論点100』に掲載されています。