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2022年の論点

2022/01/03

source : ノンフィクション出版

genre : ニュース, 社会, 国際, 働き方

金は出すが、口は出さない“マッケンジー流”

 小説家でもあるマッケンジーは内向的でメディアには殆ど姿を見せない。だが自身のブログにおいて、「少数の人に富が集中する不均衡な状態が解消されることを願っている」と綴り、その解決策は、富を持つ人たち以外によって見出されるべきだという考えを示した。ちなみに彼女は離婚から2年経った2021年3月、シアトルの元化学教師ダン・ジュエットと再婚し、彼もギビング・プレッジに賛同したことを明かした。

 マッケンジーの寄付でもう一つ特徴的なのは、「金は出すが、口は出さない」点にある。マッケンジーは「(現場の)経験豊富な方々が最も課題を的確に把握しておられ、資金の使い道について適切な判断を下せると考えています」として、寄付金の用途を縛らず、受益者にすべてを任せている。財団を作ることもなく、ひたすら「草の根」の活動を支援し続ける“マッケンジー流”は〈まったく新しい寄付のあり方〉(NYタイムズ)として、称賛を浴びている。

©iStock.com

もはや「億万長者の元妻」ではなく、新時代の活動家

 億万長者の元妻たちによる新しい形のフィランソロピーには、どのような意義があるのだろうか。第一にジェンダー格差の是正こそが次代の重要なトピックであることを改めて世に知らしめたこと。第二に米国において、慈善事業への寄付金のうち、女性を支援するための寄付の割合が2%を割っている現状に風穴を開けること。そして最も重要なことは、彼女たちの行動が新たな寄付を促す効果があるという点だ。インディアナ大学の研究によると、とりわけ女性は、他の女性による寄付行動に関心を示し、自らも寄付を行う傾向があるという。

 メリンダとマッケンジーは、ともにシアトル郊外に住む「ご近所さん」ではあったが、これまで特に親密であったというわけではなく、今回のタッグを公表するにあたっても、お互いに対する言及はない。それでも目指すべき場所は一致している。彼女たちはもはや「億万長者の元妻」ではない。自分たちの声を取り戻した新時代の活動家なのである。

◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2022年の論点100』に掲載されています。

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