米アイダホ州にサン・バレーという避暑地がある。普段はごく静かな町が毎年7月のある時期だけは一変する。近隣の空港に何十機ものプライベート・ジェットが駐機し、空港とロッジの間を防弾仕様の高級SUVがせわしなく走り回る。

 投資・コンサルティング会社、アレン&カンパニーが主催する「サン・バレー・カンファレンス」にハリウッドやシリコンバレーの大物が集結するからだ。1983年に始まり、ウォルト・ディズニーによる(米3大テレビ局の1つ)ABC買収のきっかけが生まれたのもこのカンファレンスとされる。一度取材に訪れたが、雰囲気を損なわないようアロハシャツを着たガードマンの裾から拳銃がのぞいていた。

 出席者はアレン&カンパニーを作ったハーバート・アレン(2002年に引退)とその息子に招待された者に限られ、ビル・ゲイツ、ルパート・マードック、マイケル・ブルームバーグなど超大物が顔を揃える。中でもアレン親子が別格の扱いをしているのが「オマハの賢人」ウォーレン・バフェットである。

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ウォーレン・バフェット(バークシャー・ハサウェイ会長兼CEO)©共同通信社

 バフェットが率いる投資会社、バークシャー・ハサウェイの株式時価総額は4720億ドル(約52兆円)で世界8位(今年5月時点)。バフェットが同社の経営を始めた1965年から2015年までの50年間に米国の代表的株価指数であるS&P500は140倍になったが、バークシャー・ハサウェイの株価は2万倍の成長を遂げた。

 年率20%超の投資収益を40年以上に渡って上げ続けたバフェットの個人資産は840億ドル(約8兆9000億円)でジェフ・ベゾス、ビル・ゲイツに次ぐ世界3位。年に一度、オマハ(ネブラスカ州)で開かれる同社の株主総会には世界中から4万人を超える株主が集まり「資本家のウッドストック」と呼ばれる。バフェットは総会前に株主宛に手紙を書き、次の年を展望するが、その言葉はFRB(米連邦準備制度理事会)議長に準ずる重みがある。