東京のテレビに出ない本当の理由
不思議なことに、コロナ下の非常事態で、夫婦の間に見えない絆を感じ、夫と助け合って生きていこうという気持ちになっています。手を繋いだことは一度もありませんけど、心の中では寄り添いたい。きっと彼も同じ気持ちだと思います。
おしゃべりだけで行けるところまで行きたい――。
昨年身を引くことも考えましたが、いまはそんな気持ちです。
タレント上沼恵美子の支えとなっているのは夫でもないし、子供、友達でもない。番組スタッフでもありません。ファンです。「えみちゃんの声を聞いたらスカッとする」というファンが私の支えです。
もちろん「もう面白くないから嫌い」と手のひら返しにあうかもしれません。それは百も承知。そういう移り気なファンから拍手をもらい続けるのは至難の業ですし、だからこそ追い求めたい。
タレント活動の傍ら、子供を産んで、夫や姑と喧嘩し、ふらふらになるまで子育ても一生懸命やりました。ファンの方には、こうした姿勢が共感というか、「ほんまもんや」と感じてもらえていると思うんです。
「東京で仕事しないのですか」と、これまで1000回以上聞かれました。
もちろん大阪に自宅があったのが最大の理由ですが、「東京のゴールデンで天下を取りたい」なんて一度も思ったことはありません。
紅白の後、東京のキー局から11本レギュラー番組のオファーが来ました。それでも東京に行かなかったのは、失礼な言い方ですが、私にはその値打ちが分からないからです。
大阪ローカルでも、小さな番組でも、視聴者が「絶対見逃されへん」っていう番組をやりたい。それだけの思いでやってきました。
おしゃべりの仕事は定年がなく、自分で幕を下ろすしかありません。いつか言葉が出なくなる日が来るとは思いますが、その日が来るまで、もう少し頑張りたいと思います。