今年も年末恒例「M-1グランプリ」で審査員をつとめる上沼恵美子さんが、「文藝春秋」2021年8月号で50年の芸能人生を語り尽くしました。「人生でいちばん傷ついた出来事」だったという 「怪傑えみちゃんねる」終了、そしてM-1炎上騒動の真相について明かした手記を再公開します。(全2回の1回目/#2に続く、初出:2021/08/20)

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一変した収録現場

 コロナが本当に憎い。こんなに憎いものはありません。この1年半、本当に辛い思いを味わっています。

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 コロナのせいで、テレビ・ラジオの収録現場は一変しました。

 いま私が抱えているレギュラー番組は、「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」(朝日放送テレビ)、「上沼・高田のクギズケ!」(読売テレビ)、「上沼恵美子のこころ晴天」(朝日放送ラジオ)の3本です。

上沼恵美子さん ©文藝春秋

 27年目を迎えた「おしゃべりクッキング」はゲストとトークしながら調理・試食する番組ですが、コロナの影響で昨年3月からゲストをスタジオに呼べなくなりました。

「クギズケ」や「こころ晴天」でも他の出演者と十分な距離をとるか、アクリル板を挟まないとトークできない。やり取りがスムーズにできないし、「間」がどうしても狂ってしまう。おしゃべりを生業にしてきた私にとって危機的状況です。

 何より寂しいのは、テレビ局のスタジオに観覧のお客さんがいないこと。寄席や劇場に出ない私にとって、生の反応を感じられるのはスタジオしかありません。

 200人のお客さんがスタジオに入った時の熱気と活気たるや、すごいものがあります。他では絶対に味わえない快感で、長年にわたり私の体に沁み込んでいる。いまそれが味わえないのが残念で仕方ありません。

 いざ番組収録が始まれば、もちろん全力投球します。それでも時折、集中できず、幽体離脱したもう一人の上沼恵美子が喋っている、そんな気分に陥ることがあります。