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紅白歌合戦でのイジメ

 忘れられないのが九州での南沙織さんのコンサートの前座です。

「お前らに控室はない」とトイレで着替えさせられました。南さんの控室はもちろんあって、御本人はまだ到着していないのに使わせてもらえない。私たちは夜行列車に揺られてやっと到着したのに、売れっ子アイドルの南さんは飛行機でピューッと来た。あまりの待遇差に悔しくて、「何が何でも売れなアカン」と痛感させられましたね。

 もちろん嬉しかった思い出もあります。16歳の時、富山県滑川市で北島三郎ショーに出たとき、北島さんから呼び出されました。

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「漫才の途中で歌っていたのはどっちだ?」

「私です」

「君はすごくいい声をしているし、声量もある。下らないおしゃべりなんかやめて、歌手になりなさい」

 その後、北島さんと同じ顔のお兄さんが、2回ほど大阪へスカウトしに来られました。小さい頃から歌手を目指していた私にとって夢のような話ですが、姉を見捨てるわけにもいかず、お断りしました。あのまま行けば、いまごろ北島ファミリーの一員でした。

 皆さんが想像するより、芸能界はやっかみとイジメの世界です。

 1994、95年に司会をつとめた紅白歌合戦でもいびられました。特に1年目は辛かった。

2年連続で紅白の司会 ©共同通信社

 NHKからオファーが舞い込んだ時、どっきりか冗談かと思いましたが、「おせち料理を作らないといけないし、家を留守にできません」と断りました。

 それでもNHKは「ご主人に相談してもらっても構わない」と説得するので、夫(上沼真平氏、関西テレビ元常務取締役)に話しました。

 夫の返事は「僕の黒豆はどうなるんだ?」。私が作る黒豆が好物なのですが、その返事に一番驚きましたね。

 ところが、2、3日すると、夫が「恵美子、やっぱり紅白出てくれへんか」というのです。

 夫がいうには「『あなたのせいで紅白のチャンスを逃した』と一生、責められる気がする。恵美子の人生を雑誌にたとえると、巻頭のグラビアは結婚・出産、後ろグラビアは紅白の司会になるはずやから」と。

 いざ東京のNHKホールに行くと、待っていたのはいびりの嵐でした。リハーサル前から「あれ誰ですか?」みたいな形で接してくる出演者もいたし、「ホラばっかり吹いている女やろ。本番で火でも吹いたら?」などと言われ、「何で私を選んだんや」とNHKを恨んだこともありました。ただ結果的に視聴率もよかったし、いい経験になりました。

 2年目になると雰囲気はガラッと変わりました。いじめてきた歌手の態度がころっと変わって「いや~久しぶりやね!」と肩を揉んでくるんです。人間って本当に怖い! 彼女に身体に触れられた瞬間、逆に肩が凝りました……。