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「警察調書でヤクザを示す言葉は…」 ヤクザ犯罪のスペシャリスト・警視庁組織犯罪対策四課が「マル暴」と呼ばれる“納得の理由”

元マル暴・櫻井裕一氏インタビュー#1

2021/12/26

genre : ニュース, 社会

まずは別件逮捕で取り調べに…

――著書のなかで書かれている事件のひとつに「日本医科大学病院ICU射殺事件」があります。住吉会の傘下組織が、対立状態の稲川会に報復しようとしたがうまく行かず、失敗が続いた住吉会系幹部の口をふさぐために身内を殺害しました。ヤクザの恐ろしさ、理不尽さが強調されています。

櫻井 まず、実行犯である真田光男(仮名、著書内でも同じ)を別件で逮捕して取り調べました。別件については、ションベン刑(※数年程度の軽い懲役刑のこと)ですから、「好きなように調書を取ってください」と言っていました。

銃撃事件があった日本医科大学付属病院 ©時事通信社

(起訴までの)20日間は別件しか取り調べられませんから、このうちに真田と人間関係を構築しておく必要がありました。起訴後には、「本当は日医大事件についての話を聞きたいのだな」と本人も分かっていたはずでしたが、最初はうまく行きませんでしたね。

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「櫻井さん。バーンと言って来てよ」

――本筋に触れないように取り調べを進めていると、真田の方から「変化球でなく、直球で来い」と言われたそうですね。「直球で来い」と言わせる人間関係を作るのがポイントですね。

櫻井 そこが重要です。色んな雑談を交えながら話しつつ、毎日、取り調べをやっている。そうするうちに真田も「逃げられないな」と考えたはずです。ある時に「櫻井さん。バーンと言って来てよ」となりました。向こうは自分に直接ぶつけてもらいたいのです。「変化球でなく直球で」と言って来ました。ただ、しきりに共犯者をかばっていたので「1人でやったことにしてください。その代わり全部しゃべりますから」と訴えてきました。

 昔はこういうタイプが多かったですね。共犯がいても、自分が全部罪を背負って刑務所に行く。そこで「お前の気持ちは分かる。1人で背負って行ってもらってもいいのだけど、そうしたら『警察は何をしているんだ』ということになる。目撃者は多い。それは出来ない。犯人を1人として調べたら警察としては汚点となる」と説得しました。

――この自供によって3人の一般市民が巻き添えで死亡した「前橋スナック銃乱射事件」の解決の糸口にもなりました。

櫻井 取り調べで真田が「私は(前橋スナック銃乱射事件の)実行犯を知っている」とも話してくれました。このような供述から、事件を主導した住吉会系組長の矢野治の逮捕につながりました。ただ、その後は真田が心配でした。話してしまったわけですから。組織の人間である以上、命を狙われるかもしれません。

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