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 刑事は「自供させたら終わり」ではない!

 刑事は話させたから終わりではなく、反対に話させたからこそ被疑者を守らないといけない。実際に前橋スナック銃乱射事件の裁判には多くのヤクザが押しかけてきました。法廷の傍聴席からはヤクザが真田に野次を飛ばしているんです。もし自分の身の危険を感じれば、裁判で話せなくなります。公判が維持できなくなってしまえば、何も意味がありません。私に自供したからよかったではなく、裁判官の前で事実を話してもらわなければなりません。

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――自供した場合は「すぐに上申書を取れ」というのが定石とされています。しかし、櫻井さんはその時、すぐに真田の上申書を取りませんでした。

櫻井 そこを見極めなければなりません。ただ「自供したからよかった」では終わらない。「私がやりました」と自供したからといって、こちらの都合で慌てて上申書を取っても、その焦りは被疑者に伝わります。その後に気が変わって話さなくなるケースもある。これでは完全に落ちていません。ですから真田の場合は、自供後に一旦食事に行かせて、その後、取り調べを再開してから上申書を取りました。

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 この考えはその後も続いており、管理職になって部下の取調官に指示する時も「落ちたらすぐに上申書を取れ」とは言いませんでした。「じっくりでいいぞ」と伝えるようにしていました。

四課の捜査対象は「罪名」ではなく「人」

――暴力団が関与した経済事件もかなり手がけています。著書では興産信金の不正融資や東京都発注工事の談合事件の摘発にも触れています。こうした経済事件は捜査二課や特捜検察が摘発するのが通常です。

櫻井 警察では、捜査一課が殺人や強盗、捜査二課は詐欺、横領などで、捜査三課は泥棒が捜査対象です。この担当分けは全部、罪名で分けています。しかし、組対四課は違います。四課は対象が「人」なんです。ヤクザが泥棒をやれば捕まえ、ヤクザが詐欺をやれば捕まえます。対象が「人」だからです。経済事案でもヤクザが絡んでいたら四課がやるんです。

――ヤクザと企業経営者の癒着では、経営者側が女性問題などスキャンダルをつかまれてしまうのが典型パターンです。こうした場合はどう対処すればよいでしょうか。