2021年、9月24日に逝去した、劇画家さいとう・たかを。
その代表作のひとつが「コミック 鬼平犯科帳」シリーズだ。
単行本の1巻は1994年発売。実に27年も刊行され続ける、人気の長寿作品となっている。
さいとう・プロダクションによる連載の継続が発表されており、今後も鬼平たちの活躍を楽しみにしていきたいところだが、「コミック 鬼平犯科帳」がこれほどまでに愛される理由を改めて振り返ってみたい。
時代を超えて愛される「鬼平犯科帳」シリーズとは?
池波正太郎による、大人気時代小説シリーズで、『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』と並ぶ、池波の代表作のひとつといえる作品だ。
舞台となるのは、寛政期の江戸。政情不安から、盗みや暴動が横行した時代だ。
“鬼平”と呼ばれる、火付盗賊改方長官・長谷川平蔵と、彼を支える火盗改メの面々と密偵たちが、江戸にはびこる悪党に立ち向かう捕物帳のストーリーとなっている。
登場する悪党は、主に盗賊の一味とその頭たち。
盗賊のなかには、盗みの三ヶ条と呼ばれる掟を守る“本格”の盗賊……いわゆる“義賊”も登場する。
平蔵たちは、必ずしも悪を厳しく取り締まるだけではなく、あやまちを犯した者に情けをかけることもある。
その平蔵の“粋”なはからいが、多くの人々を惹きつけるのだ。
「鬼平」世界を広げていくメディアミックス
「鬼平犯科帳」は、その長きにわたる人気から、数々のメディアミックスも展開されている。
2021年11月に二代目中村吉右衛門が惜しまれながら逝去したことも記憶に新しいが、テレビドラマも長く続いた「鬼平」作品のひとつ。
初代“鬼平”の松本幸四郎から、俳優陣を変えて制作が続き、お茶の間でも親しまれる「鬼平」作品となっている。
また、2017年には「鬼平」50周年を記念したテレビアニメも放映された。原作やドラマ、コミックに比べ“イケメン”風の若々しい平蔵の姿が大きく話題に。
そして、池波正太郎の原案をもとに、さいとう・たかをが独自の脚色を加え、コミック化した作品が「コミック 鬼平犯科帳」だ。
『ゴルゴ13』では、アウトローを描くさいとうが、体制側ともいえる火盗改メを描く、連載当初は大きな挑戦だった。
キャラクターの特徴も、原作とは異なる場合もあり、コミック版の火盗改メの面々では、通称“兎忠”と呼ばれる同心の木村忠吾や、細川峯太郎が頻繁に登場し、活躍する。