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争点2:「学校の教諭らに指導を行わなかった」川口市教委

 争点の2つ目は、川口市教委の対応だ。「川口市いじめの防止等のための基本的な方針」によれば、学校が重大事態の発生を認めないときでも、市教委は、重大事態が発生したものとして、報告・調査等にあたるとされている。市教委は、遅くとも16年10月24日までに、中学校の教諭らの認識する事実をおおむね知らされていた。にもかかわらず、市教委は、重大事態としての調査を怠り、調査の必要性を学校の教諭らに指導しなかった。このことは職務上の義務に違反する、と位置付けた。

 こうしたことから、健太さんの不登校に対して適切な措置をとることが妨げられた。また、校長や教頭、顧問の発言で事態の早期の沈静化を妨げた。そのことは、問題が複雑化・長期化し、長期間の不登校になった。それが「現在もいじめられたとの記憶や大人への不信感に苦しんでいること」の1つ、とした。

学校や教育委への警鐘 「調査を怠れば違法」と司法が明言

 判決後、原告側は埼玉県庁で記者会見をした。石川賢治弁護士はこう述べた。

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「この判決で特徴的なことは、いじめによる不登校という重大事態の調査を行わないことが違法と司法が明言したことです。それは初めてのケースではないか。

 また、教員の『いじめはない』という発言が違法になることが示された点も、知りうる限りでは初めてではないかと思います。いじめがあるかどうかわからない段階で安易に『いじめはない』と発言することは許されないということです。“いじめがない”とされて苦しんでいる方の希望になると思います。

 今年で『いじめ防止対策推進法』ができて8年ですが、現場ではなかなか法の趣旨が浸透していませんが、この判決で調査をしないことが違法とみなされたのは、影響も非常に大きいのではないか。全国にいる被害者の希望になる判決です」

判決後に行われた記者会見

 石川弁護士は、重大事態調査の中立性が問題視される証言があったことも振り返る。市教委の元職員は主尋問で「最終報告の内容と中間報告の内容とは違います。健太さんの卒業が近く、不登校が長期化したことに母親が納得しなかったから」と答え、あたかも母親が納得しなかったために、報告書の内容が変わったかのような証言をした。

 大津市いじめ自殺事件や旭川市いじめ凍死事件にも関わっている石田達也弁護士は「重大事態の調査を行わないことは全国で頻発していますが、『調査を怠れば違法』というのは、調査に対して後ろ向きの学校や教育委員会の態度に対して警鐘を鳴らす判決だと思います」と述べた。