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対応次第で、心が壊されていく子ども

 母親は「息子がいじめを受け、自傷行為をし、不登校になったときから、学校や市教委の対応は違法だと訴え続けてきました。(学校や市教委の対応の一部が)違法と認められたことは嬉しく思っています。この問題は早い段階から川口市会議員にも相談をしていました。市の問題としてきちんと重大性を認識して対応をしてくれていれば、ここまで大きな問題にはなっていませんでした。私の息子も川口市民です。本来、寄り添ってもらえる子どもが、対応次第で、心が壊されていく。ここまで追い詰められるのは異常だと思います」と話した。

一貫していじめ被害について訴えてきた加藤健太さんの母親

 原告である健太さんは判決前夜に、現在の心境をしたためた。母親によると、8時間ほどかけて、何度も書き直したという。

〈ぼくはいじめられた時、サッカー部の顧問の先生や校長先生、教育委員会は絶対に助けてくれると思っていました。それは皆から先生って呼ばれる人達だからです。

 

 でも、いじめの事を話しても、相談しても、保護者会や埼玉県教育委員会や文科省にもウソばかり報告されて、調査報告書が出た時は、会見とか保護者会で反省を言って、あやまってたけど、ぼくにはあやまらないで、裁判になったらまたウソばっかりつかれました。警察までぼくを加害者みたいな記録をつくってました。絶対に助けてくれると思った人達にこんな事ばかりされて、僕はすごくくやしいしつらいし苦しいです。

 

 命があるからいいじゃんとか言われるけど、ぼくは命があるから苦しいんです。命があるからとかないからとかで判断されたくないです。

 

 ぼくは本当にいじめられたことにより、絶対助けてくれると思った人たちに助けてもらえなくて、ウソばっかりつかれた方が、すごくつらかったです〉

判決に先立って加藤健太さんがつづった直筆のメッセージ

「一部勝訴」の知らせに無言で涙を流した健太さん

 母親は判決後に健太さんに電話をし、一部勝訴を伝えた。そのときは、「え?」と一瞬驚いたが、何も言わずに涙を流していた、という。

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 損害額が「55万円」だったことに対して、石川弁護士は「(健太さんの)心の苦しみや痛みを十分評価したものではない」とコメント。裁判所の認定事実に納得いかない部分があるとして、控訴するかどうかは検討する、としている。

 この裁判では、第1回の口頭弁論(18年9月12日)で、市側は法廷で健太さんの卒業証書を渡そうとしたことで原告側の怒りをかっていた。また、市側が「いじめ防止対策推進法」には欠陥がある、と主張するなどしていたことが話題となっていた。

 写真=渋井哲也