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2021/12/27

genre : ライフ, , 娯楽, 社会

“本州最後の秘境”が中間地点

 尾鷲から2時間、奈良県下北山村の池原ダムを過ぎて集落に入ると、久しぶりに民家を見る。ただ集落があり、そこに人が暮らしているだけで、とても安心する。

 下北山村には、この行程で唯一となるコンビニが存在する。コンビニといっても夜には閉店してしまうヤマザキYショップで、2階は民宿になっている。釣り宿が営む商店といった雰囲気だ。

併せて125mもの落差がある銚子滝(上)と不動滝(下)。こうした景色を独り占めできるのも、酷道の魅力の一つだ
こんな山道をひたすら走っていくと……
下北山村に到着。久しぶりに人の気配が感じられる

 さらに1時間以上走ると、十津川村で再び集落を目にする。十津川村は鉄道や高速道路から遠く離れ、どの方位からも到達が困難であることから“本州最後の秘境”と呼ばれている。沿道には貴重なガソリンスタンドもあるが、日曜日は営業していなかったり、夕方早い時間に閉まってしまうので、気が抜けない。この環境では、ジュースの自販機があるだけでもありがたいと思うしかない。

 十津川村がおよそ中間地点になるのだが、ここまで到達するのに半日かかってしまう。朝からひたすら酷道を走り続けると、正直、この時点でもう飽きてくるのだが、ここから抜け出すには、さらに酷道を走るしかない。じわじわと精神的にも追い込まれてくる。

落石防止のネットをかいくぐって、石が道路にまで溢れている
この行程の中間地点になる十津川村。“本州最後の秘境”とも呼ばれている

「転落死亡事故」と書かれた無数の看板

 だが、追い打ちをかけるように、この先、道はさらに酷くなる。ガードレールは姿を消し、川底まで遮るものは何もない。その代わりに設置されているのが“転落死亡事故”などと書かれた無数の看板だ。物理的に遮るのではなく、心に訴えかける作戦のようだ。

「転落 死亡事故多し」の看板や……
「この区間 転落 死亡」の看板がいくつも並んでいる。ハンドルを握る手にも、思わず力が入る

 しかし、その看板も功を奏さなかったのか、残念ながら実際に転落死亡事故は発生している。緊張感を取り戻して、慎重にハンドルを握ることが重要だ。