中田カウスが「79点」をつけたワケ
このネタに対して、審査員の中田カウスは79点という極端に低い点数をつけた。彼は、このネタを漫才の聖域に土足で踏み込むようなものだと見なして、厳しい評価を下したのだろう。
このように、『M-1』とは、審査員個々人が自らの「漫才観」を問われる大会でもある。2020年の大会では最終決戦の票が割れて、僅差でマヂカルラブリーが優勝した。この結果に納得できなかった一部の視聴者が漫才論争を引き起こした。
あれから1年。あの論争が残したものは何か。それは「漫才とは何か」という問いに対する正解が見つかったということではない。正しい答えなどプロの漫才師でもはっきりとはわかっていないに違いない。それよりも、あの論争によって「漫才とは何か」という問いが人々の心に深く刻まれたことの方が重要だ。
今年の最注目コンビは……
それが伏線となり、今年の『M-1』は例年以上に「漫才とは何か」が問われる大会となる。予選を勝ち抜いて決勝に進んだのは、もも、真空ジェシカ、モグライダー、オズワルド、ランジャタイ、インディアンス、ゆにばーす、錦鯉、ロングコートダディの9組。今年のファイナリストは、漫才観を問われる大会にふさわしい多彩な顔ぶれである。ここ数年の決勝メンバーと比べても、芸風やキャラクターの幅が広く、漫才の新たな可能性を探るような野心を持っている芸人ばかりだ。
今年の最注目株は、なんと言ってもランジャタイである。その独特の漫才スタイルは、形としてはマヂカルラブリーと似ていなくもないが、もっとはみ出している。すでにネタ番組などに出る機会も増えてきているため、お笑いファンの間ではよく知られた存在だ。
💥#ランジャタイ の意気込み💥
— M-1グランプリ (@M1GRANDPRIX) December 14, 2021
国崎:みんな見てね♡
伊藤:優勝します!今持てるすべての力を決勝で出したいです。#M1 #M1グランプリ pic.twitter.com/9Of3Ti1sMo
そんな彼らが、今年はマヂカルラブリー以上の「問題作」を引っさげて、堂々と決勝に名乗りをあげてきた。準決勝の予選会場に集まったお笑いマニアの観客を沸きに沸かせたことで、文句なしの勝ち上がりを決めた。枠に収まらない型破りな漫才を見せる彼らが、決勝の舞台で審査員と観客と視聴者に裁かれることになる。ウケるか、ウケないか、どちらに転んでも全く不思議ではない。ランジャタイが優勝するようなことがあれば、2年連続の漫才論争が巻き起こることは必至である。