昨年のM-1グランプリの王者・マヂカルラブリーにおける「非常識」と「常識」。ネタ中、前者を担うのははちゃめちゃなボケ役の野田クリスタルで、後者を担うのはそんな相方を必死でたしなめるツッコミ役の村上である。普段から、それぞれそういう役割を担っているのだとばかり思い込んでいた。

 ところが、1月上旬にインタビューをしてみると、実際は、まるで逆だという。村上の「(自分の人生を野田に)フルベットした」という発言を、最初、こちらは美談として受け取った。究極の信頼を表す言葉だと思ったのだ。ところが、野田は猛烈に反発した。

マヂカルラブリーの野田クリスタル(左)と村上

「相方にフルベットするなんてスタイル、この世界にはないですから。いいですか、ちゃんと考えてくださいよ。この世界で相方に乗っかるって、何よ。コンビですよ。にもかかわらず、『僕はもう何もしませんよ』って言ってるも同然じゃないですか。お前も走れよ、っていう話ですよ」

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「村上はクズ野郎です」

 確かに、捉えようによっては、村上は単なる傍観者のようにも見えてくる。

 マヂカルラブリーにおいて、ネタを書くのは野田だ。その点において、村上は完全に任せ切っている。

 2人を引き合わせた元芸人で、現在は構成作家をしている石橋哲也の証言だ。

「村上はクズ野郎です。村上が相方を探してるとき、『僕はネタを書けないので、ネタを書ける人がいい』って言ったんです。当時、僕もネタを書いていたので、そんな都合のいい話あるかと思いました。野田がネタを書いている間、あいつは、もらいタバコをしながら、酒を飲んでる。そんなやつですよ」

【Twitter】コンビ結成の“仲人”石橋氏と祝勝会を行った村上(石橋氏のツイートより)
 

 やりたい笑いが溢れていた野田と、やりたい笑いをまったく持ち合わせていなかった村上。正反対の2人。しかし、だからこそ、村上は野田を受け止められるのだとも思う。コップが空っぽだったからこそ、野田の意を汲むことができ、それによって野田は時には平静を保つことができたのではないか。

 それでも野田の怒りはなかなか収まらない。