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彼らの敵は過去の自分自身である。『M-1』のような大会は、どうしても初めて決勝に進む方がインパクトが強くて有利である。決勝経験者は審査員にも手の内が知られているので、過去の自分たちを越えないと高く評価してもらえないようなところがある。だが、3組はいずれも実力者であり、そのハードルはやすやすと越えてくるだろう。
史上初の“50代チャンピオン”は誕生するか
錦鯉も昨年に続いて2年連続の決勝進出を果たしている。ボケ担当の長谷川雅紀は現在50歳。昨年、自身が作った最年長ファイナリスト記録をさらに更新した「M-1界の鉄人」である。長谷川の明るさを押し出した素っ頓狂なボケに対して、渡辺隆の冷静かつ的確なツッコミが挟まれる(渡辺自身はツッコミではなく「注意」だと言っている)。彼らが勝って史上初の50代チャンピオンが生まれれば、若手の大会という『M-1』のイメージは崩れ去ることになるだろう。
決勝当日は、この9組に敗者復活戦を勝ち抜いた1組が加わる。敗者復活戦には見取り図、ニューヨーク、ハライチ、アルコ&ピースなどの実力者が名を連ねていて、ここからチャンピオンが生まれても全く不思議ではない。
10組の芸人がいれば、10通りの漫才があり、10通りの生き様がある。今年の『M-1』は、彼らが人生を懸けて「漫才とは何か」を見る人に問いかける大会になるだろう。いざ行かん、漫才論争の向こう側へ。