1990年代まで多くの企業は面接だけで採用選考をしていました。2000年代からは適性検査SPIを実施するようになり、2010年代からはインターンの活用が広がりました。最近では、大学でのGPA(Grade Point Average、成績評価値)や履修状況を見る動きもあります。このように、企業の採用選考は着実に進化していますが、それでも人が人を正しく評価するのは至難の業のようです。
諸悪の根源は「新卒一括採用」
では、「採用して後悔した社員」という問題は、これからどう展開していくのでしょうか。人事部門はこの問題を解決できるのでしょうか。
まず、確実視されているのは、今後も「採用して後悔した社員」が増えていくことです。
採用面接のオンライン化や学生の面接対策の進化などで、企業が学生の能力・特徴を正確に認識・評価するのはますます難しくなりますし、テレワークによるコミュニケーションの希薄化などで社員のメンタルヘルスが悪化するからです。
人事部門がこの問題に対応する上で障害になるのが、「新卒一括採用」です。職業未経験の学生を大量に一括採用し、入社後に本人の適性を見て担当業務をアサインするという日本の慣行は、次の3つのような弊害をもたらします。
第1に、採用数の目標ありきで数合わせをするので、先ほどの商社の意見のように、不本意ながら「まあ取りあえず採っておくか」という判断になりがちです。
第2に、本人がやりたい仕事と会社がアサインした仕事が合致しないというミスマッチが起こり、モチベーションの低下や離職に繋がります。
「当社や業界に興味が薄い一方、研究開発・商品企画といった職種の希望を明確に持って入社してきた場合、職種の希望が叶わないとあっさり退職してしまいます」(素材)
第3に、短期間で集中的に採用選考を行うので、就活生の能力・特徴を正確に把握するのが困難です。
「インターンを充実させるなど、丁寧な選考をするように改革してきました。ただ、インターンは受け入れる現場の負担が大きく、コロナで実施しにくいという事情もあって、縮小の方向で見直すことになりそうです」(IT)
どうやら、新卒一括採用の慣行が崩壊するか、成績不良社員を解雇できるような法改正が実現しない限り、この問題は永遠に人事部門を悩ますことになりそうです。