たまたま着ていたTシャツが……
平畠 全部、偶然と言えば偶然なんですよ。元々サッカーの仕事がしたくて、インターネットのサイトでコラムとかは書いていました。でも、一番のきっかけになったのは、J Sports (CS)の『Foot!』という番組です。もともとその番組が好きで、よく観ていたんです。で、『Foot!』は年2回くらい、番組のオリジナルグッズを作っていて、僕もそのTシャツを買ってよく着ていたんです。
それである日、加藤浩次さんが出られているTBSのサッカー番組に副音声のゲストとして呼ばれた時に、たまたまそのTシャツを着て現場に行ったんですよ。そこで、番組が始まる直前に、15秒くらい「この後、すぐ!」みたいな映像が流れるじゃないですか。それを、偶然『Foot!』のスタッフが見ていて。
そこで、「この芸人、うちの番組見てんのか。呼んだれ」ってなって。そこからどんどんサッカーの仕事に繋がっていきました。だから、僕が今もサッカーの仕事が出来てるのって、ほんとたまたまなんです。副音声やし、その15秒間を『Foot!』のスタッフが見てない可能性の方が高いじゃないですか。
――その日、番組のTシャツを着ていたのも偶然なんですか?
平畠 たまたまTシャツを積んでいる中の一番上にあったから、それを着たという感じで。そんな偶然が重なることがなかったら、今頃はたぶん普通に働いてたと思いますね。
「俺のスタイル」なんて一切ない
――芸能界ではなくて、ということですか?
平畠 そうですね。たまたま30過ぎて、『くさデカ』とか、サッカーの仕事をさせてもらえるようになりましたけど、そうじゃなければ、今自分が何してたかなって思います。もしかしたら吉本にいる意味もなかったかもしれないですし。
今でもそうだけど、「絶対この道しかない」と思うことってないんです。何かを目指して今に辿り着いたわけでもないし、この先、来年だってどうなってるか分からないですから。だからこそ、行った先で頑張るという感覚しか自分の中にはないです。それが楽しくて、生きてる感じかもしれないですね。
――そのスタンスはずっと変わらないですか?
平畠 ほんとは仕事って、ある程度自分の中で完成されたものがある方がいいと思いますよ。今日はうまいこといくけど、明日どうなるか分かりませんとなると、発注する方からしたら嫌でしょうから。でも、考えようによっては、スキルがあるとそれに頼っちゃいますよね。だから、自分はスキルがない分、ずっと目の前のことを頑張っていくしかないんです。
来年何してるのかわかりませんし、「俺のスタイル」みたいなのも一切ないです。でも、確立していないからこそ、今もこれからも面白くやっていけそうな気がしています。
平畠啓史(ひらはた・けいじ):
1968年8月14日生まれ。大阪府出身。関西大学卒業後、宝塚ファミリーランドでの勤務を経て、お笑いの道へ。現在は『くさデカ』(テレビ静岡)への出演の他、Jリーグウォッチャーとしてサッカー関連の仕事も数多く担当している。
写真=今井知佑/文藝春秋