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地方でがん患者がメンタルサポートを受けるには?

──地方にお住まいの方は、どういうところに相談するのがベストでしょうか。

小川  相談支援センターでは、おもに看護師と医療ソーシャルワーカーが相談員を務めています。認定・専門看護師、トレーニングを受けた医療ソーシャルワーカーであれば基本的なカウンセリングスキルを身につけていますが、一般の相談員研修だけの場合、がん医療のメンタルサポートについて1時間程度の講義を受ける機会しか与えられません。そのため、がん治療の流れを踏まえたカウンセリング技術を身につけることは自主努力に任されているのが実情です。

「相談支援センターに行ったけど、いいアドバイスがもらえなかった」という不満も聞きますが、現場でメンタルヘルスに関わる者が、単に情報提供をするだけではなく、一緒に心理的なサポートも提供できるような実践的スキルも身につけられるよう、国や自治体にもベース部分をもっと強化する手立てを考えてほしいと思います。

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──今後高齢化がますます進むにつれ、精神腫瘍科はさらに重要度を増す部門ですよね。

小川 確かにそうですね。技術や治療法はますます進化し、今後もがんサバイバーの生存率が上がっていくのは間違いないでしょう。ですが、めざす医療者が少なく、精神腫瘍科は人手不足状態が続いています。日本は、社会支援に対する理解がアメリカなどに比べるとかなり遅れているのが心配です。

がん予防や治療・研究に350億超の予算。緩和ケアにはわずか11億

──国からの予算という意味では、がん対策にかなりの額を費やしていますよね。

小川 国は積極的にがん対策を推進していますが、ゲノム医療など大半はがんの治療と研究で、その次が予防、最後に緩和ケアという状況です。平成29年度の予算概算要求では、がん予防に186億円、がんの治療・研究に168億円なのに対し、緩和ケアはわずか11億円という低さでした。メンタルサポートへの費用はさらに少ししかありません。すごい差でしょ。ここ、もう少し議論されてもいいんじゃないかと思います。

──「精神腫瘍科」の領域で活躍できる若手の人材育成も重要ですね。

小川 そうなんです。私はいま、ピアサポートの啓蒙活動にも関わっています。やっていることは主に講演やピアサポーターの研修会の手伝いなどで、全がん連(一般社団法人 全国がん患者団体連合会)と一緒に活動しています。病院に行きづらい、地元の病院に精神腫瘍科がないなど、受診の機会が持てない患者さんやご家族の方たちのためにも、病院と民間とで手を組みながら、もっと気軽に相談できる環境を広げていけたらいいなと思っています。

写真=山元茂樹/文藝春秋