前稿前々稿と野菜が持っているがん予防効果について解説してきました。

 ブロッコリーやキャベツ、菜の花など「アブラナ科」の野菜は、胃がんと大腸がんの発生リスクを抑える研究結果があることを、またニンジンやホウレンソウ、カボチャなどの「緑黄色野菜」には、男性の胃がんや、男女ともに肝がんや食道がんの予防効果がある可能性が大きいことも紹介しました。

 野菜には、これらの品目以外にも、がんの予防効果があると思われているものがあります。

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 例えば、ニンニクやニラ、長ネギ、タマネギ、ラッキョウなどの「アリウム野菜」もそのひとつです。

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 これらの野菜に含まれるアリルスルフィドやS-アリルシステインなどのいくつかの成分には、がんの発生要素である活性酸素の働きを抑え込む働きや、発がん物質の生成抑制、解毒促進作用などがあることが分かっています。

 2007年に世界がん研究基金と米国がん研究協会が下した判定でも、アリウム野菜は胃がんに対する予防効果を持っている可能性が大きいとの結論が出ています。

 また、抗酸化作用という意味では、トマトやニンジンなどに含まれる赤い色を出す色素成分の「リコペン」も、活性酸素を抑制する働きを持っています。

 さらに、ゴボウに代表される根菜類や、シイタケなどに豊富に含まれる「食物繊維」は、世界がん研究基金と米国がん研究協会による報告書の最近の改訂では、大腸がんの予防効果があることが確実と判定されています。

 ただ食物繊維については、調査によって若干ニュアンスが異なる結果が出ています。

 2003年にヨーロッパの8カ国で行われた大規模コホート研究では、食物繊維による大腸がんの発生抑制効果が明確に示されました。食物繊維の摂取量が多いほど大腸がんの発生率も低く、最大25パーセントもリスクを下げるとの結果が出ています。

 ところが、やはりヨーロッパや米国で行われた17のコホート研究を統合して解析した2006年発表のデータは、「食物繊維の摂取量が1日当たり10グラム未満の人は、食物繊維の摂取量が増えることで大腸がんのリスクが下がるものの、摂取量が10グラム以上の人は、リスクが軽減することはない」というものでした。国立がん研究センターの多目的コホート研究でも同様の結果でした。少しわかりにくい表現ですが、早い話が、「食物繊維の摂取量が少ないと大腸がんになりやすいが、一定量を超えてたくさん食べたからと言って、それ以上予防効果が高まるわけではない」ということなのです。

 前稿の「緑黄色野菜」の項でも書きましたが、がん予防に効果があるからといって、その野菜だけを単品で食べ続けるよりも、色々な野菜を総合的に食べるほうががんになる危険性を下げるということは、世界中の研究からも明らかとなっています。

 厚生労働省が勧める1日あたりの野菜摂取量は350グラムですが、2011年の「国民健康・栄養調査」によると、日本人の成人1日あたりの野菜摂取量は平均277グラム。実に73グラムも不足しているのです。

 特に若い世代ほど野菜不足が顕著です。「どの野菜がいい」と選ぶよりも、とにかく野菜を食べることに、もっと積極的になることが大事なのです。