誰もが当事者になり得る「がん」と「お金」の話。2回目は、がん治療に伴う「経済的リスクへの備え」についてです。国や自治体からもらえる助成金にはどんなものがあるのか。民間保険と公的制度(保障)の割合はどのくらいがベターなのか。経済的リスクに賢く備える方法は……。FPの黒田尚子さんにお聞きしました(全3回の2回目。#1が公開中です)。
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もしがんと診断されたら、使える公的制度はどれぐらいあるの?
──がんの経済的リスクに備える方法があったら教えてください。
黒田 がんの経済的リスクに備える一番よい方法は、がんにかからないことです(笑)。そのためには、日頃から生活習慣を見直し、定期的に適切ながん検診などを受けること、そして気軽に相談できるかかりつけ医を持つようにしましょう。このように心がけておくことで、たとえがんと診断されても早期発見できれば、経済的負担の軽減につながります。もちろん、どんなに気をつけていてもがんになる可能性はあります。がんと診断された時に自分が使える公的制度がどれくらいあるのか、民間の保険に加入している場合はどれくらいの保険金がもらえるのかなどを調べておくと、いざと言う時に役立つと思います。
──民間保険と公的制度で半々くらいまかなえれば安心でしょうか。
黒田 セミナーでもよくお伝えしているのですが、国や自治体の助成金などの公的制度(保障)と預貯金、民間保険を私は「がんの経済的リスクに備える3本柱」と言っています。公的保障と民間保険のどちらがいいとか、どちらかだけでいいということではなく、お互いに補完し合っているんです。ただし、あくまでもベースは公的保障で、預貯金と民間保険は自助努力の部分になります。相対的に、会社員や公務員の方は公的保障が手厚く、自営業や非正規職員の方は公的保障が薄くなりがちなので、「自助努力」の預貯金や民間保険の比率を増やしておいた方が安心です。
──公的保障は申請が複雑で、自分がどれに該当するのかもよくわかりません。
黒田 公的保障は基本的にセルフサービスなんですよ。利用したければ、自分で調べたり手続きをしたりしないとお金がもらえません。わからない場合はがん相談支援センターや自治体などに聞きに行くのもよいですが、その場合に気をつけてほしいのは、一つの相談窓口で利用できないと言われても諦めないこと。「この制度は利用できない」と自分で思い込まないでほしいんですね。相談窓口の人がその制度に詳しくない可能性もありますし、公的制度は頻繁に改正が行われます。以前は利用できなくても、制度が変わって利用できるようになっている場合もあるんです。