「がんサバイバーを雇ってください」と直談判できるような図太さを
──会社員の場合は、健康保険組合などでも保障がありますね。
黒田 勤務先の会社の健康保険組合ホームページなどにも説明があると思いますが、「福利厚生のしおり」などでも確認できるはずです。分からない時は総務の方に「大事なところにマーカーでチェックを入れてください」「いくらもらえますか」など、具体的に聞いてみてください。
──がんサバイバーの就労支援は、自治体ごとに増えていますか?
黒田 たとえば東京都は今年4月、全国で初めて治療と仕事を両立している難病やがん患者を新たに雇い入れ、継続就業に必要な支援を行う事業主に、奨励金を支給する独自の助成金「東京都難病・がん患者就業支援奨励金」を創設しました。私のところへ相談にきた方には、「がん患者を雇用すると企業が奨励金をもらえる制度があるから、(がんサバイバーである)自分を雇ってください」と経営者に直談判できるくらい図太くなれ、と言っています。
──昨年は厚生労働省からも、がんなどの疾病を抱える患者の就労をサポートする制度が発表されました。
黒田 がんや脳卒中などの疾病を抱える方が、治療と職業生活が両立できるように事業者用にまとめたガイドラインです。厚生労働省のホームページからダウンロードできます。
「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」
基本は事業者向けのものですが、冊子の中には労働者が利用できる支援制度や機関一覧も載っていますので、インデックス的に便利な使い方ができると思います。
がん患者の資産運用には「つみたてNISA」がおすすめ
──もし、がんになったら資産の「運用」は積極的に取り入れたほうがいいと思いますか?
黒田 運用もリスクヘッジのひとつの方法ですが、やれば必ずトクをする「家計の救世主」になるわけではありません。また、運用する場合は自分がどれだけリスクを取れるか「リスク許容度」を把握することからスタートするのですが、相対的に、今後の見通しがつきにくいがん患者のリスク許容度は、低くなることも理解しておくべきです。
でも実際のところ、がん患者の方でも投資したいというご相談はよく受けます。2018年1月からスタートする「つみたてNISA」は、税制優遇が受けられるので、優先的に利用を検討したい商品です。現行NISAは非課税総額が600万円(120万円×最長非課税期間5年間)ですが、つみたてNISAは年間40万円を最長20年間利用できるので、限度まで利用した場合は800万円(40万円×20年間)となります。積立のみの利用ですが、いつでも現金化することが可能なので、不意の支出に備えることもできますね。
写真=杉山秀樹/文藝春秋
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