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交通誘導員の弱い立場
聞き込みを通じて浮かび上がってきたのは、交通誘導員に対して強く出るのが、何もドライバーや通行人に限らない、ということである。建設会社などの依頼主や、直接の雇用主である警備会社に対しても、誘導員は弱い立場に置かれることになる。
工事作業員や現場監督によっては、見境なく叱責や怒号が飛んでくる現場も珍しくないとベテランのAさんは語る。
「いくら場数を踏んでも、難しい現場で、人が少ないとガックリきますよ。人出が足りなくて混乱すれば、ドライバーだけじゃなく、監督や作業員の人たちからも怒鳴られます。その日はもうグッタリです。誘導員同士でも、イザコザとか、相性の良し悪しはありますし」
現場の状況に対して適正な人数が配置されないのは、当然誘導員の責任ではない。しかし、発注や人員配置の段階で不備があったとしても、方々から不満や怒りをぶつけられるのは先頭に立つ誘導員である。
交通誘導がスムーズになされていない状況があっても、それが誘導員の怠慢や能力不足に由来しているとは限らない。苛立ちを目の前の誘導員にぶつけたところで、問題の本質には何も影響を与えることなく、いたずらに個人の心を傷つけるだけ、ということもある。足止めを喰らって苛立つのも自然なことだが、ドライバーとして冷静かつ寛容な行動に努めたい。