今春、「ゼロクリック論争」が世界のウェブ広告業界のホットトピックとなった。「2020年のグーグルでの検索回数のうち、約3分の2では表示結果を何一つクリックされることがない」との調査結果を、マーケティング企業スパークトロのランド・フィシュキンCEOが公開したことがきっかけだ。検索こそがインターネットの最も核心的な機能だが、その威光は陰りつつあるのではないのかと懸念する声が上がったのだ。

 いわゆる「検索の死」が取り沙汰されているのはウェブ検索だけではない。EC(電子商取引)の世界で今、急成長を遂げているのがカナダのショピファイや日本のベイスなど、独自ネットショップ開設支援企業だ。アマゾンや楽天市場などのネットモールは無数のショップが集まっていることが売りで、多くの消費者が集まり、検索して欲しい商品を探しだす。その集客能力こそがネットモールの強さの源泉だ。

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「サーチコスト」がかかるように

 ところが最近では、ネットモールに出店するショップの数が増えすぎて、検索してお店までたどりついてくれる消費者が少ないとの不満が高まっている。集客力が期待できないのならば、高い手数料を取られるモールに加入する価値はない。こうして独自ネットショップ開設の魅力が高まっているわけだ。

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 デジタル化の進展に伴い、インターネットで公開されている情報やコンテンツ、販売されている商品やサービスの数は爆発的に増加している。検索によって情報を集めては比較し、最適のものを選び出す。この手間を「サーチコスト」と言うが、以前よりもはるかにコストがかかるようになったのだ。選択肢が増えるという、一見するとポジティブな事象が思わぬ弊害を生み出している。

「ゼロサーチ」に挑む中国のサービス

 サーチコストの増大、この問題はどのように解決されていくのだろうか。将来的にはAI(人工知能)が秘書の役割を果たしてくれるようになるのだろう。