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「やり直せると思っていたのに…」憧れの仕事を“いじめ”で辞めた風俗嬢が『鬼滅の刃』に見いだした“最後の救い”

『東京ルポルタージュ 疫病とオリンピックの街で』より #3

2021/12/26
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はじめて認めてもらったって思ったかな

 私だけハブられていたんです。私が入っていないグループラインが職場にあったんです。知りたくもなかったのに、その子としては良心なのかな。教えてくれる子がいて、初めてわかったんだ。私の失敗をみんなで共有して、笑い物にしていた。思ったよりも重労働でしょ。それに、みんな自分を笑っているかもしれないなんて環境で働けるわけないじゃないですか。もうすぐにでも辞めようって思った。何もかもがどうでも良くなってきたって感じですかね。

 「私はこれ以上はもう頑張れないので、辞めますね」と言って、数カ月でやめたんです。そのことを後悔しているかといえば、まったくしていないです。そのまま働いていたら、私は生きてここにいなかったですよ、たぶん。できるものならすっと消えてしまいたい、みたいな感情ばかりでしたもん。

 でもそこで実家に帰るなんて選択も私にはなかったです。家族が自分の味方だと思ったこともないし、家になんていたくないから東京に出てきたので。そこであっさり帰ってもダメだなって思ったんですよ。やっぱりお金を貯めたい。親族もいないし、友達もいない18歳がまともに次の月の家賃を払おうって思ったら、できる仕事なんてそこまで多くないんですよ。

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 私、すぐにスマホで検索しました。それは最初はびびりましたよ。本当にできるかなと思いますよね。でも、迷っている時間が無駄なんだって頑張って電話しました。入店のときにちょっと手当みたいなお金がもらえるお店にしようと思ったのが決め手といえば決め手です。お店を選ぶのに大した理由はないですよ。

 電話かけて、すぐに面接に行くことが決まって、あっという間に採用されて、スタッフさんに言われるがままに源氏名も決まったんだよね。ここではずっと18歳。誕生日がきても18歳のまま。私、見た目が幼いじゃないですか。だから、ちょっと若く見られるの。それが得しているって思うことが多いかな。自分の見た目、そんなに好きじゃなかったけどね。

 私は店内でも多くのリピーターさんが付いているほうなんだよ。はじめて認めてもらったって思ったかな。この年で、普通のアルバイトや普通の就職だともらえないようなお金もらって。1日出勤したら、一週間働きっぱなしなのと同じくらいの額になるんだよ。いや、もっとかな。私はもう一度、専門学校に通おうと思って、しっかりお金を貯めたいんだ。