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がんの「再発」が分かって来るリピーターにはどんな言葉を?

――心の琴線に触れるような言葉ですね。中には、2度3度と面談に来られる方もいらっしゃいますか。

樋野 リピーターも多いですよ。がんの再発が分かって来る人もいるね。

――「再発」というのは、働いていくうえでも、とても大変な部分があると思います。そういう方には、どんな言葉をお伝えするのでしょうか。

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樋野 がんの再発は、自分でコントロールできないことです。そういうことに一喜一憂すると、疲れてしまうからね。だから、「全力を尽くして、後のことは心の中でそっと心配する」くらいだね。「どうせなるようにしかならない」と思って。勝海舟は、そういうことを言ったんですよ。

どんな境遇でも、自分より困っている人が必ず周りにいる

――日々、仕事をしていく中でも、大切な家族や友人を亡くして、なかなか本来の暮らしに戻れないという方も多いと思うのですが。

樋野 元気な人は元気な人に接したら、「プラス×プラス=プラス」で、自分がプラスになる。プラスの人は、マイナスの人を避けるんですよ。「プラス×マイナス=マイナス」で、自分がマイナスになるから。

 でも、マイナスとマイナスをかければ、プラスになるでしょ。だから、疲れている人や悩みがある人は、マイナスの人に接したほうがお互いにいいんです。どんな境遇でも、自分よりも困っている人が、必ず自分の周りにいるものなんですよ。八方ふさがりでも天が開いているようにね。ただし、待っていては出会いは与えられない。自分で一歩踏み出して、それを探しに行くんです。そうすると、今はマイナスの人も、「マイナス×マイナス=プラス」に変わるでしょう。

 

――ああ、そうですね。

樋野 今つらいと思っている人でも、自分よりつらい状態の人がいることを知ると、「自分に何かできることはないか」という別の視点が持てるようになるんです。マイナス思考からプラスの発想に変わるんだね。すると、それまで自分のことだけを考えていた人の中の優先順位が少し変わる。これが、「がん哲学外来」の存在意義なんですよ。

――だから帰る時は、表情が違うんですね。

樋野 来た時は苦しかったのに、面談で話して、帰る時は人のために動こうという気持ちになっている。一日にして、瞬間的に変わるんですよ。「人生はプレゼント」だから、自分のことには無頓着になるんだね。プレゼントは人に与えるものでしょ。自分のことを考えすぎると、人との関係性で悩んでいくんですよ。がんになった人は、これまであまり見えていなかった、そういう大切なことに気づくことができるんです。

写真=杉山秀樹/文藝春秋
(#3に続きます)