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データ解析を担当するアナリストの仕事

 当然のことながら、膨大なデータを扱うには専門のスタッフも必要だ。データ解析を担当するアナリストである。高津監督は彼らの仕事を絶賛する。

「アナリストが素晴らしい仕事をしてくれています。試合で気づいたことについて、それをアナリストに質問すると、ポーンと答えが返ってくる。なにを質問しても、本当になんでも答えてくれます。数字、映像に関しては、僕の現役時代にはなかった部門。投手の球の回転数や、打者がボールを弾き返した角度なんかはもう常識になってきましたけど、これからは映像解析によって、投手のケガの予防だって可能になるかもしれない」

©杉山拓也/文藝春秋

 高津監督は主に、外国人選手の獲得のプロセスで、映像を確認することが多いという。

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「今季のオフ、トロント・ブルージェイズにいたA.J.コールと、韓国のLGでプレーしていたアンドリュー・スアレスのふたりの投手を獲得しましたけど、アナリストに質問すると、彼らが持っている球種、対右、対左打者のデータがバーっと出てきます。もちろん、映像も瞬時に見られます。以前はスカウトの眼力に頼りっぱなしでしたが、今はあらゆる角度から分析したうえで獲得できます」

考える野球の進化

 野村監督にインストールされた考える野球は、最新の技術をアップデートしながら、進化し続けている。一部には、もう野球には進化できるエリアが残っていないのではないか、という意見もあるが、高津監督は発展の可能性を感じているという。

「たしかに、現代野球は進化の頂点に達しているかもしれないし、サイン、戦術といったことは出尽くしているとも言われています。でも、バントひとつとってみても、まだまだ改善できる余地はある。深く知れば知るほど、考えれば考えるほど、野球にはまだ進化できる余地があると感じます」

©杉山拓也/文藝春秋

 考える野球という野村監督の遺伝子は、情報、データ、映像を取り込みながら、進化の真っ最中にあるのだ。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。