きょう12月23日は落語家の笑福亭鶴瓶の70歳の誕生日である。彼が6代目笑福亭松鶴に入門したのは20歳だった1972年2月14日。来年には芸歴50年を迎えることになる。
タモリやビートたけしが70代に入って仕事を徐々に絞りつつあるなか、鶴瓶はいまなおテレビやラジオでレギュラー番組を多数抱える。それと同時に落語の高座も精力的にこなす。コロナ禍にありながら、今年だけですでに落語を97席やったという(※1)。
「らくだ」にオリジナルのオチを用意
筆者も今年7月、名古屋の御園座で開かれた鶴瓶の独演会を観に行った。このとき鶴瓶は、師匠・松鶴との思い出を題材にした新作落語に続き、中入りを挟んで師匠の得意とした上方落語の大ネタ「らくだ」を披露している。じつに1時間を超える大作で、鶴瓶はときに大きな動きを交えながら熱演し、すっかり引き込まれてしまった。終わりには本来のオチに加え、鶴瓶オリジナルのオチが用意されていて驚かされた。
鶴瓶の落語を見たのは、ずっと前にテレビでやっていた「青木先生」という高校時代の恩師を題材とする新作落語が唯一だったが、それはフリートークの延長線上にあるものという印象だった。それが「らくだ」を見て、鶴瓶は古典落語もこんなにしっかりと演じられる人なのだと恥ずかしながら初めて知った。
「死ぬまで世に出すな」と頼んだ映像
この夏には、彼の素顔に迫ったドキュメンタリー映画『バケモン』も公開された。監督の山根真吾はテレビ番組の構成演出家で、2004年より17年間、自主的に鶴瓶を撮影してきた。山根はその目的を誰にも言わず、鶴瓶も自分が死ぬまで世に出すなと念を押していたという。