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鶴瓶が松鶴から「らくだ」を見事に継承し、名人の風格も漂い始めた現在から振り返ると、小沢の慧眼に驚かされる。上方落語の伝統を背負うという予測も的中した。
最近雑誌に載った座談会では、45年来の付き合いであるシンガーソングライターのさだまさしから《鶴瓶ちゃん、「松鶴」は継がないの?》と訊かれていた(※1)。たしかにいまなら松鶴を襲名しても誰も文句はつけないだろう(もっとも、さだはこのあとで、鶴瓶が継いだら「松鶴」と呼び捨てできる、と冗談めかして言っている)。
ただ、筆者としては、長らく皆が親しんできた鶴瓶の名前は捨てないでほしいとも思う。何より師匠がつけてくれた名前である。
初代鶴瓶はアルコール中毒死
ちなみに松鶴は命名に際し、鶴瓶に「落語家系図」を見るよう言ったという。そこには、初代鶴瓶は4代目松鶴に破門されたあと、林家に行って染八と名乗り、アルコール中毒で死んだと書かれていた。師匠もそうとう洒落がきついが、鶴瓶は《おもろい名前つけてもろたなあと不思議な気持ちでした》とのちに語っている(※6)。そんなおもろい名前、やはり今後も背負い続けてほしい。
※1 『婦人公論』2021年11月24日号
※2 『波』2010年7月号
※3 『婦人公論』2006年10月22日号
※4 『論座』2004年2月号
※5 「ほぼ日刊イトイ新聞」2021年6月22日配信
※6 小佐田定雄編『青春の上方落語』(NHK出版新書、2013年)
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