昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「怖い話」が読みたい

2022/01/03

死臭を吸い込まないようハンカチで口を抑えながら

 細い崖道を登り、自分、不動産屋さん、そしてリフォーム屋さんで建物へと向かいました。特殊清掃は済んでいるのですが、それでも腐乱死体と聞いているので、死臭を吸い込まないようハンカチで口を抑えながらドアを開きます。

 このアパートは1階と2階で1部屋ずつあり、腐乱死体が見つかったのは2階の居室になります。液状化したご遺体が床に染み込んでしまったらしく、居室部分の床は完全に撤去されていました。表面のフローリングを剥がしたとかではなく、梁の部分も含めて床そのものがなくなっているのです。

 2階の床がないということは、当然1階の天井もありません。歴戦の勇者である不動産屋さんとリフォーム屋さんも、これにはちょっと驚いているようでした。

今の特殊清掃は本当にレベルが高い

 このアパートは木造なので、ご遺体が染み込んでいたり、臭いが取れなかった部分は切り取られていました。そして、切り口には臭い止めのための青い塗料が塗り込まれています。建物の傷口から青い血が流れ出しているように見え、かなり異様な雰囲気です。

 この切り取られた部分を継ぎ足して物件を再生できるか、さっそくリフォーム屋さんの社長に調べてもらうことにしました。社長が勇気を出して口をふさぐハンカチを外してみたところ、なんと臭いがまったくしないと言うのです。

 私と不動産屋さんもおそるおそる呼吸してみたのですが、たしかにまったく臭いがしません。腐乱死体とひと夏を越した物件とは思えない無臭ぶりで、最近の特殊清掃はすごいね~とみんなで感心してしまいました。

写真はイメージ ©️iStock.com

 調子にのって青い塗料の部分に顔を近づけでみましたが、それでもまったく死臭はありません。ちゃんとした業者さんが特殊清掃をすれば、大抵の物件なら臭いが取れてしまうのでしょう(ただしこれは木造だからであって、コンクリートに染み込んだ場合はまた話が違うようです)。