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《死体放置による腐敗臭は気にならないが…》「あのアパートはもうダメです」“特殊な不動産屋”から紹介された事故物件…契約時に起きた“不可解”すぎる出来事とは

《死体放置による腐敗臭は気にならないが…》「あのアパートはもうダメです」“特殊な不動産屋”から紹介された事故物件…契約時に起きた“不可解”すぎる出来事とは

2022/01/03
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 リフォーム屋の社長にざっと見積もりをしてもらったところ、天井と床の新設、完全に剥がされた壁クロスの張り替え、木部の補修と塗装、水回りの一部交換などで500万円ほどかかるとのこと。

 利回りを計算してみましょう。まず本体価格が500万円、リフォーム代が500万円で1000万円です。

 家賃相場としては1部屋6万円ほどですが、事故物件なので安く見積もって5万円と仮定します。2部屋あるので年間120万円です。

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 トータルすると12%という利回りになります。決して高いとは言えないのですが、近くの中古アパートが8%ほどで売られていることから、割安なのは間違いありません。満額(値切らず)の買付申込書を買いて不動産屋さんに渡し、購入の意志を伝えました。

麓のお稲荷さまにお参りすると…

 満額なので特に問題なく買付も通り、翌週末に契約と決済を行うことになりました。これで自分も一棟アパートのオーナーです!

 掘り出し物なのでニヤニヤが止まらないのですが、それでも人がお亡くなりになっている物件です。念のため、仲良しの神職さんに「なにかしたほうが良いか」と尋ねてみました。

 現場の写真をメールしたところ、「私が行ってお祓いをしてもよいが、麓にお稲荷さまがあるのなら、まずそこに挨拶したほうが良い。日本酒と油揚げでもお供えして、いまからお世話になりますと、誠心誠意お伝えしてください」との返信がありました。

 自分は信心深いほうなので、さっそく近くのスーパーでワンカップと油揚げを購入し、お稲荷さまにお供えして、アパート経営が上手くいくようにご挨拶しました。

写真はイメージ ©️iStock.com

 そして物件から帰宅した途端、不動産屋さんから「あのアパートはもうダメです。契約は流しましょう」という驚きの電話が入ってきたのです…。

松本一族が怒っている!?

 どういうことなのか不動産屋さんに聞いてみたところ、物件の周りの土地を押さえている松本一族(仮名)が、なぜか急に怒り出したとのこと。

 周りの地主が怒ったところで売買には関係ないように思えるのですが、アパートへ向かう小さな私道も、物件につながっているガス管・水道管も、全てが松本一族の土地を通っており、松本一族を怒らせると事実上ゲームオーバーなのです。

 物件に出入りするだけであれば囲繞地通行権(他人の土地を通って出入りできる権利)を主張できるのですが、地中配管の整備などは所有者の承諾がないと難しいため、何かあった場合のリスクを考えると引き返すのが賢明だとのことで、やむなくキャンセルで了解しました。