「間違いなくおかしい」と言われた“疑惑の区間記録”
「5区は7区間の中で最も距離が短く、すでに流れも決まっている後半区間ということもあり、基本的には1年生や、チームで最も“力の無い”選手が配置されることが多いんです。区間記録保持者の浅井さんが当時所属していた小出高校は、その年の総合結果で46チーム中44位と決して駅伝強豪校ではありませんでした。
そんなチームがエース級の選手を5区に回すことは、普通には考えにくい。記録に関しても、3km区間にも関わらず区間2位と40秒もの差をつけており、『これは間違いなくおかしいだろう』という話は周りから言われることはありました」
こう語るのは、現在5区で浅井さんに次ぐ歴代2位の記録を持つ藤井翼さんだ。
藤井さんは長野・佐久長聖高校時代の2008年、5区で区間記録まであと2秒に迫る8分24秒の好記録で区間賞を獲得し、全国制覇も達成している。
当時の佐久長聖にはマラソンの大迫選手も
当時の佐久長聖高校は、東京五輪のマラソンで活躍した大迫傑選手や、箱根駅伝で活躍した村澤明伸選手など超高校級の選手がそろっていた。藤井さん自身もインターハイの3000m障害で2位(日本人1位)という結果を残しており、高校生ランナーの尺度となる5000mの記録も14分9秒という、当時で言えば超一流の記録をマークしていた。
「あの年のチームは誰がどの区間を走ってもおかしくない準備はしていました。現に地区大会では全員、全国大会とは別の区間を走っていて、最長区間でエースが走ることの多い1区10kmを走るような選手が3km区間を走ったり、いろいろ試しながら区間配置を考えていました。
本来、僕くらいのタイムを持っている選手はもっと長い距離の区間に起用されるケースがほとんどだったと思います。たまたま当時の戦略が『総合優勝を狙うには後半の4~7区で勝負しよう』という狙いだったので、僕が5区に配置されたという感じです。他校が一番手薄なところに配置したいということで…」