仕立ての良いスーツを完璧に着こなした英国紳士。と思いきや、次の瞬間には持っていた傘を武器に奇想天外なアクションを披露する。

 スタイリッシュでバイオレンス、笑いもたっぷりで、世界中の観客を魅了してきた「キングスマン」。だが、最新作『キングスマン:ファースト・エージェント』は、現代が舞台の過去2作とは少し趣が違う。時代は第一次大戦期で、登場人物には歴史上の人物も。この難しい設定の中、どう「キングスマン」の世界観を貫くのか、シリーズ初主演となるレイフ・ファインズは興味をそそられた。

レイフ・ファインズ

「脚本を読んだら、第一次大戦時代の有名な詩が出てきたんだ。これがあの世界観にどうフィットするのかと好奇心を覚えたよ。それに、歴史的事実は正しいのか、正しい必要があるのかとも。でも、過去2作を撮っているマシュー・ヴォーン監督だから大丈夫だと思った。彼は誰にもコントロールされず、自分のビジョンを貫く。岩にぶち当たって転覆するかもしれなくても、彼の船に乗りたいと思った。スタジオの操り人形が監督する映画に出るより、ずっと良い」

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 今作では、国家に属さない秘密のスパイ組織“キングスマン”がどう始まったのかが語られる。その構想を打ち立てたのが、ファインズ演じるオックスフォード公だ。彼と、息子のコンラッドは、世界大戦を密かに操る悪のグループに立ち向かう。

「オックスフォード公が、『この独立した組織は、平和と人の命を守るために戦う』と言うシーンがあるが、現実の社会にもこういう人たちが必要だよね。今、世の中はめちゃくちゃだから。神話の中には、しばしばそういう人たちが出てくる。彼らは、金儲けや地位を得ることに興味がない。すべての瞬間を、他人への思いやりと敬意を持って生きているだけだと思う。ポップコーン映画ではあるけれども、ここではそういった理想も語られると思うよ」

 アクションシーンのために、たっぷりのトレーニングをもって挑んだ。

「現実にはありえないシーンを作り上げるのは楽しかった。絶対不可能なことが可能に見えるものに、僕らはお金を払って見に行きたいと思うものだ(笑)。『007』はその例のひとつだが、意外性があるとさらに良い。一見、強くはなさそうな人が実は優れたファイターだったとわかったりすると、ますます面白くなる」

 舞台俳優でもあり、映画監督、プロデューサーとしても活躍。コロナ禍のロックダウンの間はそれらから遠ざかることになったが、根っからのアーティストだけに、家にいながらも芸術に触れ続けた。

「詩を学んだし、ロシア語の勉強をしたよ。普段よりもっと料理もしたり、オンラインでバレエのレッスンも受け、体型を保つようにしたりした。でも、舞台が恋しくてたまらなかったね。早くまたステージに立ちたいよ」

 日常が戻りつつある今、その日はそう遠くないかもしれない。

Ralph Fiennes/1962年イギリス生まれ。『シンドラーのリスト』(93年)、『イングリッシュ・ペイシェント』(96年)でオスカーにノミネートされる。ダニエル・クレイグ版『007』ではM役、『ハリー・ポッター』シリーズではヴォルデモート卿役を演じている。

INFORMATION

映画『キングスマン:ファースト・エージェント』
12月24日公開
https://www.20thcenturystudios.jp/movies/kingsman_fa