蛯原友里、押切もえ、山田優ら、数々の人気専属モデルを抱え、赤文字系雑誌の一角として数多くの女性たちからの支持を集めた『CanCam』。2000年代半ばには発行部数80万部を超えるほどの爆発的なブームとなった同誌だが、『CanCam』のどのような点が女性たちの心を射止めたのだろうか。

 ここでは、作家の鈴木涼美氏が『JJとその時代 女のコは雑誌に何を夢見たのか』(光文社新書)の一部を抜粋。「めちゃモテ」ブームのあらましを振り返る。(全2回の2回目/前編を読む)

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軽薄で最強な「めちゃモテ」ファッション

 2000年代半ば、「JJ」「ViVi」「Ray」と並ぶ4大赤文字系雑誌の一つであった「CanCam」の発行部数が最大で80万部超という一大ブームを巻き起こした。そのブームを牽引したのは蛯原友里、押切もえ、山田優ら当時の人気専属モデルで、それぞれ少しずつテイストの違うファッションを担い、蛯原友里の着こなしを真似する「エビちゃんOL」は当時の週刊誌などでもその名を取り上げられている。ややマニッシュで大人っぽい山田優ファッション、カジュアルを取り入れた押切もえファッションに比べて、フェミニンで女性らしい甘さのあるエビちゃんOLのファッションは、街角やキャンパス内、会社内で多く見られ、アプワイザー・リッシェなど代表的な人気ブランドは大いに売れた。

 誌面では、写真に架空のラブストーリーをつけて蛯原友里を全面的にフィーチャーするPHOTO連載「エビちゃんシアター」が人気を呼び、2006年春にはその連載をまとめた増刊号も発売される。2008年の12月号で大々的に「卒業」するまで、CanCamという雑誌全体の雰囲気を牽引する看板的存在であった。

「「CanCam」2008年12月号」

 90年代後半から2000年前後に部数的には全盛期にあったJJファッションとエビちゃんOLのファッションを単純に見比べると、類似性がありつつどこか雰囲気の違いが嗅ぎ取れる。高級ブランド志向はやや落ち着き、より柔らかく、軽やかで、万人に不快感を与えないファッション。おそらくその辺りに、CanCamブームを支えた「めちゃモテ」のコピーの真髄がある。

「「 CanCam」 2006年5月号」