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2022/01/03

本当にチョットだけよん

 店の人の緊張具合が伝わってきましたが、私はどうもこういうことに動じないので、いつも通り控え室へ向かいました。ラウンジの中を見渡すと、黒っぽいスーツに身を包んだいかにもなお偉いさんたちがお行儀良く並ばれ、殿下はなんと! 一番真ん前のど真ん中に浴衣で座っていらっしゃいました。その“ショーを見たい!”という意思をしっかり受け賜りました! 殿下のお隣にははんなりと芸者さんが座ってらした。孫娘のような歳の私のショーをどうご覧になるのだろうか。

新人時代の宣材写真

 ニコッと殿下に向けて悩殺笑顔を振りまくも、一向に顔色が変わった様子はなかったのですが、殿下の瞳の奥がきらりと光ったのを見逃しませんでした。本当にチョットだけよん。隣に座る芸者のお姉さんはニコニコと美しく微笑み、黒服のお偉いさんのおじさんたちも、場所を少し温かくしてくれようとしたのか、「おお~」とか言いながら笑顔で拍手してくれました。

 そしてなんとその翌年の高松宮杯の日も、偶然にも私がショーを務めることになりました。だから2年連続、殿下は私の“悩殺ニコッ”を受け取ったのです!

 不思議なご縁で、実は同じ時期に私の母も高松宮殿下とお会いしていました。母は自由が丘の社交ダンス教室に通っていましたが、あるダンスパーティーに殿下がいらして一緒に踊ったとのこと。なんともオープンマインドな殿下。そして母娘共々踊りの種類は違えど殿下にお会いできたのは光栄でした。さて、私は脱いでしまったのでしょうか? それは殿下と私の秘密です。

 ホテルでのショーも沢山ありました。ホテルのラウンジや宴会場で踊ったり。宴会場は大概中小企業の慰安旅行のお客さん。和室もあれば洋室もあり、どれもステージがついていました。“旅の恥はかき捨て”とは言うものの、ショーができなくなるほど羽目を外すお客さんに遭遇したのは人生でもほんのわずか。皆さんお行儀はよかったです。ステージから降りて「チョットだけよ~」も、今はなき文化ですね。

(#3へ続く)

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