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「殿下の瞳の奥がきらりと光った」“ヌード界の宮崎美子”が明かす「意外過ぎるお客さんたち」 ヤクザに坊主、ロイヤルファミリー…《キャバレーの文化史》

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『エロチカ・バンブーのチョットだけよ』#2

2022/01/03

 キャバレーも徐々に不景気の煽りを受け、大型の店がなくなっていく頃、地方都市の芸能社はナイトクラブだけでなく、カウンター席しかないスナックでもショーをブッキングしていました。カウンター席の後ろは人1人通れればOKというほど狭いお店もありました。お客さんは振り返りながらショーを見ていました。さぞ良いストレッチになったことでしょう。

 こういう小さいスナックでは、店の大きさと反比例してチップが沢山出ます。スナック数軒を掛け持ちしてショーをしたこともありました。キャバレーと違ってショーを見るより、ショーダンサーが近くにいるということが喜ばれました。だから一晩で8万円くらいチップが入ったこともありました。

キャバレーミナミ前にて

 あるとき、そのうちの1軒が焼き鳥屋さんでした。「え~っ、いくらなんでも焼き鳥屋はないでしょう」と思ったものの早めにお店へ下見に行くと、店長さんが丁寧に天井の小さなライトの一つ一つに、小さく切ったオレンジのゼラチン(照明のフィルター)を貼り付けていました。

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焼き鳥屋の手作りステージでヌードショー!?

「みんな楽しみにしていますよ」と言われ、私は感動しました! 普段は焼き鳥を焼いていてゼラなんて貼ったことはないだろうに、その微笑ましい努力に「わかったわ。まかせといて! 断然張り切っちゃうもんね」という気持ちになりました。

 入り口の扉はいわゆる横開きの硝子戸です。カウンター席と、奥に4人ほど座れる御座敷があり満員でした。こんな夜に限って、まったく焼き鳥と似つかわないモンロー風のウィッグとコスチュームで登場する私。待機していた車から出たのは寒空の下、やれやれ。自ら扉をガラガラと開けて登場すると「待ってました~」と一斉に拍手が沸き起こり、その熱気に外の寒さは吹っ飛び、私のいつものグランドキャバレースタイルのショーのチグハグさに自分でも面白くなってしまいました。こんなことは滅多にない。そしてお客さんは皆、サザエさんに出てきそうな波平さんやノリスケさん、マスオさんのような気の良さげなお父さんたち。下品な助平親父は1人もおらず、とても温かいのです。

 ショーの最後は、入り口の横に立てかけてあった一枚板の立派な看板を見つけ、それで体を隠すと「看板になりたい!」という掛け声と笑い声。登場と同じようにガラガラと扉を開け、笑顔を残しつつ後ろ向きに外へ。もちろん後ろに誰かいたらお尻が丸見えの裸ん坊です。田舎だったので、そこにいたのは大きなお月様とコオロギくらいでしたけれど。

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