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蔓延した“ルール違反” チラリズムが破壊

 そして私は、同業者の踊り子に対してもメラメラと怒りの炎が燃え上がっていたのです! ストリップ劇場で売れなくなった踊り子やAV嬢、素人さんがキャバレーにどっと流れ込んで来て、チラリズムのルールは破壊されていきました。ギャラさえもらえれば何をやってもいいのか!? “ストリップティーズ”から“ティーズ”がなくなってしまった。“焦らす”はいずこへ?

 何より悲しかったのは、そうしないと仕事がなくなると思い込んだフロアーダンサー(キャバレー回り専門の踊り子)までもが素人さんと同じことを始めてしまったこと。これでは衰退するのは必然。芸能社を通して出演した店でさえ、自分を売り込むための“ルール違反”が平然と行われていた。世の中綺麗事だけじゃないけれど、一線を越えたら雪崩のように崩れていく。

 劇場で仕事がなくなり、キャバレーに流れて来たある踊り子さんが戸惑っていたのを覚えています。最終的に局部を見せてしまう。そうしないと注目を浴びないと思っていたのでしょう。そして今まであったキャバレーのショーのスタイルも、この劇場から流れて来た踊り子さんだけのせいではなく、キャバレーの踊り子さんも仕事がなくなると危惧し、徐々に「もっと見せろ」という要望を飲む人が増えて変わってゆきました。もともとキャバレーはそういうショーのスタイルは下品だから好まれなかったのだけれど、徐々に何も言われなくなってゆきました。

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パルコ賞を受賞したころの野口千佳さん

たかが“局部”なんかに負けない!

 銀座にある大きな老舗のキャバレーでさえ、「ステージで踊るより、客席を裸で練り歩くように」と指示され、六本木にあった暗黒舞踏のグループが経営していたショーパブでさえもラップダンスがメイン。「せっかく芸術家の皆さんなんですから、もう少しヒネリのある見せ方はできなかったのかしらねえ」と嫌みの一つ吐いたところで虚しくなるばかり。とにかくもうこの業界は荒れ放題でした。

 しかしながら、不景気で次々に消えていくナイトクラブやキャバレー。数少ない仕事を奪うためにみんな必死だったのだろうと思います。これは当時の日記に書かれていた一節。

 もしアタシがストリップ劇場で踊るなら喜んで股を広げましょう。奥の奥まで見せるのがルールなら見せてあげる。でもここはフロアーダンサーの世界。お客さんから見れば同じストリップ。それでも大切なものは守り抜きたい。ガンコ一徹!裸一貫!

 アタシが見て信じていたキャバレーのステージは、もうそこにはなかったの。歴代の踊り子のお姉さんたちがここで踊って磨かれた床。アタシがデビューの頃のお姉さんたちはもういない。