――これだけは描かないと決めていることはありますか?

克・亜樹 基本的に相手を傷つけるような行為はNGにしています。言葉にしても、行為にしても、性暴力につながるもの。世の中にはそういうプレイもあると作中で説明しますが、キャラクターたちがそれを選択することはないです。やっぱり、タイトルが『ふたりエッチ』ですから。タイトルには“ふたりで紡ぐ”という意味合いがあると思いながら描いてますしね。

 だけど、描き続けていると作品世界の深いところに入って行って、「これを描かずにはいられない」という衝動に駆られるんです。これは長く連載を続けている作家さんなら、誰もが経験しているんじゃないですかね。たとえば、アクション漫画を描いていたら、ヴィラン側の心情やドス黒い気持ちにまで踏み込みたくなってしまう。

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彼と添い寝するだけの関係、いわゆる“ソフレ”である坂内君と綾瀬さん ©克・亜樹/白泉社

『ふたりエッチ』が、そのゾーンに入っていいかどうかは、やっぱり悩みますし、それを表現するとしたらどうすればいいのかと考える瞬間はあります。そうは言っても『ふたりエッチ』然り、僕が描きたいものって基本的にコメディなんですよね。読者が「バッカでぇ」と笑ってくれるような作品を描いていたい。だからこそ、そこからズレてしまったら、もう『ふたりエッチ』を描けなくなってしまうので。

描くべきテーマはまだまだある

――子供たちに向けた性教育をめぐるエピソードや、53歳の童貞部長・神童貞光というキャラクターが登場しています。克先生としても、さまざまな世代の性に踏み込んでいきたい想いがおありですか?

克・亜樹 中年童貞だった50代部長の話を描きましたけど、今後はさらに上の世代にも触れておきたいところですね。いまはシニア婚も増えてきているし、実際に高齢化社会になっちゃってますから。

©克・亜樹/白泉社

――性に関するネタは尽きないですか? それは『ふたりエッチ』が25年も続いていることで証明されているとは思うのですが。

克・亜樹 どの民族もそうかもしれませんけれども、まだまだ性は隠すものというか、まっさきに隠してしまいますよね。『ふたりエッチ』を通して、なにが隠されているのかを明らかにしてきた身としては、描くべきテーマはまだまだあるだろうと思っています。

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