――『ふたりエッチ』には克先生自身の性愛観が反映されていると思うのですが、作品ではあらゆる性の指向やジェンダーを肯定していますよね。優良の妹である梨香は性に奔放ですが、克先生はそれを悪いことや恥ずかしいこととして描いていません。
克・亜樹 そこは、描いていくうちにそうなった気がします。連載当初は、恥ずかしいことを描いてる感覚があったんですよ。僕自身も思春期は、性について書かれた本とかに興味津々でしたが、恥ずかしくて買いたくても買えない。そんな感覚を引きずったまま、漫画を描いていたんですね。
でも、結婚して、夫婦生活を送っていると、「どんな形であれ、みんな性について考えたり、自分なり、自分たちなりに性欲を満たしたりしているんだよな。それって当たり前のことじゃないのか」と悟って。やましいことをしているわけでもないのに、そういうふうに描くのってやっぱり違いますよね。性の指向も、食事と同じ感覚で考えたり、話したりしてもいいんじゃないかと。だって、「俺は野菜しか食べないんだよ」と言っても恥ずかしくないじゃないですか。連載開始当初よりも、現在のほうがその気持ちが強くなっています。
優良さんと真の馴れ初め
――1巻の冒頭で、真と優良が「処女童貞率低下の昨今においては貴重なサンプル」であると紹介されていましたが、現在は処女童貞率が上昇しています。連載開始当初はマイノリティな存在だったふたりですが、現在の性意識に照らし合わせるとマジョリティになっているのが、面白いというか、大変といいますか、25年の歴史を感じるといいますか。
克・亜樹 処女、童貞に関しての話は、もう真と優良さんでは描けないですから、代替キャラクターとして草食男子の坂内君と彼と添い寝するだけの関係、いわゆる“ソフレ”になっている綾瀬さんを登場させました。初期から登場しているキャラクターに、現在の性事情を反映させられない場合は新しいキャラにやってもらっています。
新規で読んでくれた方からすると、優良さんと真の馴れ初めがお見合いとかありえないでしょう。いまは婚活アプリがあるわけだし。さかのぼって読まれたら「うわぁ、昔の漫画だね」と思われるでしょうけど、そこはもうしょうがないので。