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 私は聞いていない振りをしていたが、ミキはどうやら男の下で仕事をするようだ。それはつまり、南一番街に存在する違法の管理売春地帯で働くということだ。外国人勢力のボスとペレの関係が私の中で繋がった。

「ミキは偉いな。ペレ、前みたいにヤクザに何かされたらすぐ言え」

 物騒な会話とは正反対で、外国人勢力のボスの風貌があまりにも普通であることが恐ろしい。私は意識して、外国人勢力のボスとミキとペレを見ないようにしていた。だが、ペレが私のことを警戒している空気だけはひしひしと伝わってきた。

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少女を利用する違法売春「覚醒剤漬けでゴムを外され…」

「それじゃー、ボス、また夜ね。楽しくなるの、用意しとくねー」

 ミキは無邪気な声でそう言った。

 ミキとペレが店を出る。外国人勢力のボスは、スロットを打ちながらも忙しそうに電話をし始めた。

「あの女、いなくなっちゃったの?」

「いつ、あれ持ってこれる?」

 危なそうな話を笑いながらしている。私はその姿を見て、憤りを感じた。ミキは外国人勢力の金儲けの道具にされている。はっきり言えば、ペレによってミキは売られたようなものだ。ミキが覚醒剤漬けにされて、リスクもある中で違法売春行為をおこない、心身ともにボロボロになってしまわないかが心配だった。

 2019年11月、私は群馬県太田市から少し離れた北関東某所のカラオケ店で、ミキと会っていた。裏社会系を題材に取り扱う出版関係者にとって、誰にも会話を聞かれないカラオケ店は格好の打ち合わせの場所だ。

 案の定、ミキは外国人勢力に酷い目に遭わされたらしい。あれだけ注意をしたのにもかかわらずである。追い込まれたミキが、助けを求めてきたというわけだ。青白い顔をしたミキはぶるぶると震えている。前より少し痩せたように思えた。

「今日、仕事サボっちゃった。怒られる。どうしよう」

 ミキの携帯がしつこく鳴っている。ペレからの電話のようだ。

「休みとか全然なしで客取らされて。違法の風俗だからゴムを外されたり中出しされたりもした。警察にも言えない。ミキが1日10万稼いでも、もらえるのは3000円ぐらい。最初はペレは毎日、数万円渡してくれたのに。ペレと一緒に住んでいるアパートに仲間たちが来て、無理矢理セックスされたこともある。後でペレに言っても、何もしてくれない。ペレに仕事辞めたいと話しても、駄目だって怒るの。他の女と遊んだりするし、どうして……」