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蜷川は2016年に亡くなったが、小栗のなかではいまなお師の存在は大きい。昨年のインタビューでも《以前、尊敬する演出家の蜷川幸雄さんに「楽なところに行きすぎるなよ小栗」って言われたことがあります。どんな仕事も楽ではないなか、「こうすれば形になる」といった明確な“答え”が用意されていて、そこに行くことだけが目的になってしまうことがあり得るってことなんですが……。だから今でも本当は、役はオーディションでつかみ取りたい》と語っていた(※6)。
大河ドラマの主演も、もちろん楽な道ではないだろう。オファーを受けたときには、1つのキャラクターを1年4カ月ものあいだ演じ続けることに自分が飽きないでいられるかという不安もあり、受けるべきか悩んだという。しかし、母親から「もしあなたがやったら、私はあと2年生きる」と言われたこと、そして脚本が三谷幸喜であることも大きな要因となって、やると決めた。
蜷川幸雄が見出した「天性の才能」
『鎌倉殿の13人』で演じる北条義時については《義時って史実だけ読んでいくとなかなかダークなエピソードが多いので、これを三谷さんがどう面白おかしく描いていくのかはとても興味深いですね》と語っている(※7)。そこで思い出されるのは、蜷川幸雄がかつて2007年にアルベール・カミュの不条理劇『カリギュラ』の主演に小栗を起用したとき、その理由を本人との対談で説明した次の言葉だ。